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春の終わり、夏の始まり 26

その日の夜も更け、窓の外には満点の星が広がっていた。
静かな部屋の中に、波の音がわずかに響いている。

義之と唯史は、酔いも手伝って、深い眠りに落ちていた。
が。
かすかな気配に、義之が目を覚ます。
「ん……?」
エアコンの効いた部屋の中、体に感じる温もり。
唯史が、義之の体に抱きつきながら、よく眠っている。

「唯史…寝ぼけたんか」
苦笑して、義之は子供をあやすように、とん、とん、と唯史の背中を軽くたたく。
安心したのか、唯史はぎゅっとしがみついてきた。

「しんどい目にあったもんなぁ…」
唯史のこれまでの身の上を振り返り、義之はため息をつく。
同時に、心の奥底からあふれる愛おしさも感じていた。

「俺が何とか幸せにしてやりたい、と思っても、唯史はノーマルやからなぁ」
もう一度深いため息をついて、義之はふたたび眠りについた。
唯史の体をひきはがすことは、できなかった。

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