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春の終わり、夏の始まり 2

年末も近い12月上旬の夜、唯史は久しぶりに大学時代の友人たちと居酒屋で飲んでいた。
あちこちで賑やかな笑い声が心地よく響く中、話題はそれぞれの近況へと移っていった。
だが唯史が美咲の最近の様子について話し始めると、友人の一人が顔を曇らせた。

「唯史、それちょっとおかしいんじゃないか?遅くまで仕事と言っても、毎週末とかどうよ?一度ちゃんと話をしてみた方がいいんじゃないか?」
その言葉に、唯史はハッとする。
他の友人も同意見で、
「そうだよ、気になるならはっきりさせた方がいい」
と助言してくれた。

やがて飲み会が終わり、それぞれ帰路についたが、唯史の足取りは重かった。
友人たちの言葉が頭をぐるぐると駆け回り、美咲への疑念が再び膨らんでいく。

帰宅すると、美咲はすでに眠っていた。
さっとシャワーを済ませて隣のベッドに身を横たえ、美咲の寝顔を見つめる。
起きている時は大輪の花のように華やかな美咲だが、寝顔はどこかあどけない。
愛おしくもあるし、どこか遠くにも感じられる。

お互い忙しくしていることもあって、そういえばここ数か月は夜を共にしていなかった。
それでも、美咲は特に不満を持っている様子でもなかったから、問題はないと思っていた。

美咲に対する疑念に、心が痛む。
妻を信じたい気持ちと、友人たちの言葉が引き起こした疑念とが葛藤している。
唯史はベッドの中で深いため息をつきながら、どうにかこの状況を打破したいと強く願った。
だが、どう行動すれば良いのか、その答えは簡単には見つからなかった。

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