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『余暇間』の障子戸

Twitterに投稿したこちらの投稿が過去最高に「いいね」をもらい戸惑いました。最近手掛けた住宅内部の一室をオフィスとリビングに改修する仕事での既存の引違戸を隠すためにデザインした障子戸です。

もちろん自分で良いと思って提案しているのは言うまでもありません。デザイナーはモノや空間をデザインする時にすべての要素に意味を持たせます。それが実用的なものであったとしても、感性的なものであっても、自分のデザインには責任を持って説明可能であることが重要です。自分がデザインの意味を理解せずに提案するということはありません。

クライアントや計画を取り巻く要件との対話を通して検討し、デザインは机の上で始まります。最終的な出来上がりを想像しつつ施工者と検討を重ね、できあがりを現場で最終確認します。計画・設計したものに対する自信は経験と知識と技術に裏付けられており、確信を得るのはできあがった後です。正直な話をするとこの障子戸が現場で設置された時、「これでよかったのだろうか」と不安でした。それを確認するためにTwitterに投稿したと言ってもいいと思います。数件でしたが感想をくださる方もいらっしゃいました。

内装改修の主題

今回のクライアントからの要望を大まかに説明すると「子育てが終わり、自宅で仕事をしているので、生活と仕事をする空間を分けたい。小さいスペースだが、オフィス空間を独立して設けて欲しい」というものでした。お話をいろいろ伺っていくと仕事場だけでなく、食事をする場所とリラックスする場所も同じ場所で過ごしており、家事の一部である料理も仕事ですから、ダイニングからキッチンが見えることも落ち着けないのではと思いました。そこで改修箇所として指定された場所をもう一度見直して、所謂オフィススペースとリビングスペースを設けることを提案しました。

障子戸の意図

この障子を設けている場所はリビングスペースに当たる場所です。ここではクライアントの趣味である読書,TV,映画,音楽鑑賞を楽しむ『余暇間』と呼ぶことにしましょう。その『余暇間』には通りに面した2mx2m程度の既存のサッシがあり、通りや向かいの住宅からの視線があるために普段は雨戸を閉めきっているとのことでした。北側の窓から入る柔らかい光を取り入れながら雨戸を締め切ることなく視線を遮るための装置をつくれないかと提案したのがこの障子戸です。また、この場所は余暇間の正面に見える場所でしたから、新しい落ち着いた空間に少し緊張感を与えるような象徴的なものにするのはどうだろうと考えたのです。

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美装時の写真で申し訳ないですが…余暇間の正面に見る障子戸

障子戸のディテール

写真の通り障子戸の紙が貼られる部分はアクリル板が入れ子状に斜めに貼られています。一定の寸法で刻まれたアクリル板の間には隙間が設けられており、北側の光が舐めるようにアクリル板を照らします。デザインの意図としては成功したと思いますが、正直「ちょっとやりすぎたかな…」と感じたのです。特に住宅の設計で心がけているのは限られた空間の中で極力言語を混在させずに、全体の世界観を統一させます。生活の道具で溢れることを考えると住宅空間はそれくらいシンプルでいいと思っています。今回の改修では仕事をするアクティブなスペースと落ち着いた『余暇間』が隣接していますから、それらを違和感なく繋げるために空間を構成する要素を言語寸法で統一する等の工夫はいつも通りです。

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美装と検査が終了して、残念ながら例の雨戸を閉めた後の写真…

Twitterの反応について

Twitterでの反応をみると紙ではなくアクリル板を用いているためのメンテナンスの容易さについてコメントがありましたが、私が思うに表情がよかったのではないかと思います。この障子戸が設置された日は検査と引渡も兼ねていたので半日以上滞在していました。北側採光は光が安定しているので通常は表情が変わりにくいですが、それでも時間帯で表情を変える様子を捉えることができました。お一人での暮らしに時間の移ろいが感じられる動的な表情を象徴的に加えられたのはよかったなと思っています。


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Mizutani Hajime,atelierHUGE主宰,書籍等:地方で建築を仕事にする(学芸出版)臨海住宅地の誕生(新建築社)現在知Vol1(NHKブックス),日本建築学会 2018年-2019年 建築雑誌編集委員,空間の探求と再現が仕事,島暮らしの猫好き。

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