映画レビュー(124)「クワイエット・フォレスト」

2016年 メキシコ映画

「クワイエット・プレイス」みたいな作品を想像すると肩透かしを食らう。原題は「闇」とか。
 物語はすべて森の中。アリゲールは深い森の中で父と兄、妹の4人で暮らしていた。病気がちな妹を看病する彼は、父親の言いつけで生まれてから一度も家から出たことがなく、外の世界に憧れを抱きながらも、大きな唸り声をあげて家の周りに群れる怪物に怯える日々を送っていた。わずかな物音や気配を察知し人間を襲う謎の怪物だと言うのだ。
 ある日、食料の調達へと向かった父と兄。しかし、帰ってきたのは父のみだった。
「“あれ”にさらわれた…。兄は死んだんだ」
 だが、父の言葉を信じようとしないアリゲールは、自ら外に出て兄を探すことを決意。密かにガスマスクを装着し家の外へ踏み出すのだが。
 一応、こういったストーリーはあるが、すべての設定や背景は一切説明もされず、伏線としての回収もないように見える
 途中一瞬、寝落ちもした(苦笑)
 あえて解釈するのなら、子離れのできない偏執的な父親に縛られた子供たちの葛藤のようにも見える。父の作っている子供たちとそっくりのパペットとか、その暗喩なのだろうか。また、父親が幻視する狼も何を象徴しているのだろうか。この親子には母親の姿も見えない。そもそも、この子供たちが本当の子供かもわからないのだ。
 もう少し、観客に親切でもいいと思う。製作者たちは脚本用意しながら、雰囲気作りには奔走しつつ、内在するであろうテーマを最後まで見つけることができなかったのではないか?
 新人の作品にはよくあることなのだが。

クワイエット・フォレスト

(追記)
 この父親の狂気に原理主義的なキリスト教の信仰を重ねることもできそうである。彼らは聖書を読んでいるし、舞台の世界も「終末後」(キリスト教的な)を思わせる。我が子イサクをいけにえに差し出すアブラハム的な父親とか。
 とにかく雰囲気はいいのだから、もう少しヒントを入れてほしかった。

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