映画レビュー(63)「ウィッカーマン」(1973年英国)

昨日書いた「ミッドサマー」繋がりで、元祖・民俗学系ホラーということで思い出したのがこの作品「ウィッカーマン」である。

物語は典型的な失踪人探しだが

 主人公のニール・ハウイ巡査部長は「行方不明の少女を探して欲しい」という匿名の手紙に呼ばれて、スコットランド西岸のサマーアイル島にやってくる。島民は口をそろえて「知らない」を繰り返す。島民は、キリスト教以前の古代宗教(ドルイド教・古代ケルト人由来)を奉じていて、少女は生け贄にされるのではないかとの疑念を抱き始める。

ホラースタイルの文明批評でもある

 島民達は性におおらかで、謹厳なキリスト教徒であるニールは怒りと苛立ちを抱いていく。当初は巡査部長の目線で観ていた観客は、後半ではこの旧弊な価値観のキャラに苛立ちを感じ始める。何しろこの時代1973年は、ヒッピー文化の影響が広まっていて、フリーセックス、ロックオペラ「ヘアー」の時代だ。時代はニューエイジ、アクエリアスである。
 やがて観客の半数は島民の方にこそシンパシーを感じてしまい、この石頭の警官がウィッカーマンに入れられて燃やされてしまうラストシーンは、旧来の価値観や倫理観を葬った爽快感すら感じられた(私には)
 ホラー映画の伝統の長い英国だからこそ生まれた映画だと思う。
 書きながら、近年、再映画化(ニコラス・ケイジ主演)された作品がこれをどうリメイクしたか実に気になってきた。

「ウィッカーマン」
(追記)
タイトルのウィッカーマンは、木で組まれた人形で、古代ケルト人のドルイド(支配階級)たちは、この人形にいけにえを入れて神にささげたということが、ガリア戦記の記述でわかる。

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