ブックガイド(100)「そして夜は蘇る」(ハヤカワ・ミステリ)
ハヤカワ・ミステリ版で再版された傑作ハードボイルドである。
私立探偵澤崎シリーズの第一作にして作者のデビュー作。1988年の作品だけあって、オーソドックスなハードボイルド探偵像だ。そう、チャンドラーとか河野典生とか生島治郎などの作品の系譜を継いでいるのだ。
語り口に酔う
私は生まれて初めて書いた作品が、大藪春彦まがいのハードボイルド・アクションだったぐらいハードボイルド好き。この作品は、まず作者の語り口に酔わされた。
一人称「私」が語る探偵・澤崎が人捜しの仕事を受け、その謎を追いながら次第に、過去の政治家の狙撃事件の真相に近づいていくという物語。
謎解きではない
謎解きを得々と語るようなミステリではない。探偵は、事件の捜査を通して、関係者達の行く末を見届ける役割だ。あくまでアウトサイダーなのである。依頼人と探偵という距離感を最後まで守るが、言外でそっと寄り添ってもいる。その距離感が大人なのだ。
読みながら「俺は、こういう作品が読みたいんだよ」と心の中で呟いていた。
「そして夜は蘇る」
読み終えて、大好きなハードボイルド作品の文体や語り口、探偵のキャラなどで小説指南系の「創作エッセイ」書こうという気になった。近日アップするからお楽しみに。
(追記)
創作エッセイ(55)で、「ハードボイルドの掟」という一文を書いた。明朝(2/23)アップするのでお楽しみに。
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