映画レビュー(120)「ドント・ヘルプ」

2018年 メキシコ映画

 ある夜、3人姉妹の強盗が上院議員の家に侵入する。現金を要求されてやむなく盗みに入ったのだ。議員夫婦を椅子に縛り、お金を手にしようとするが、地下から奇妙な叫び声が聞こえてくる。調べに行くとベッドに縛られた上院議員の娘である少女を発見する。三姉妹は実の父から暴力を受けた過去があり、助けを求める少女に自分たちの姿を重ねてを助けようと拘束を外す。だが、実は…、という作品。
 よくできたホラーだった。観客の予想を少しずつずらしていき、最後はおなじみのあのネタに行きつくのだが、その悪意ある存在がどのような攻撃を仕掛けてくるかというと、その当事者たちの心に潜むトラウマや憎しみを煽り、仲間の対立を煽っていく。
 この悪意ある存在は、どうしても争いをやめることのできない人の心の弱さや、連鎖する憎悪の引き起こす終わりのない戦争のような「人間の業」を暗喩しているのだろう。
 それが、ラストの「事件から三週間後」の映像になっているのだ。ハリウッド製のエクソシストものより、ずっと重厚で示唆に富んだ作品である。
 メキシコ映画、侮れん。ホラーマニアは必見だ。
ドント・ヘルプ

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