ブックガイド(85)SF少年の記憶「創元SF文庫総解説」
1963年9月から始まった、創元SF文庫の歴史をたどる解説集である。
史上初の公式ガイドブックとのこと。
創刊から現在まで約800冊のレビューが収められ、折々の時代を振り返るエッセイ、対談も収録。
私の出会いは1969年
私が初めて買った大人の本が創元推理文庫のSFマークだった。小学六年生の時である。
父は高校の国語教師で、玩具などは絶対に買ってくれなかったが、本だけは、読みたいものを何でも買ってくれた。ただ、児童書は総じて高額である。私が小6になった時、父は私を児童書ではなく文庫本の棚の前につれていき、今度からここで本を選べ、と言ったのだ。
当時、児童書の中では数えるほどしかなかったSF作品が、ここには、ずらりと並んでいるではないか。それが創元推理文庫だった。
初めての一冊
アーサー・C・クラークの「銀河帝国の崩壊」が初めて買った創元SF文庫だった。地球最後の都市ダイアスパー。壁に閉ざされた街の外に憧れる少年アルビンに、私は当時12歳だった自分を重ねて読んでいたのだ。
その後、アシモフ、ハインライン、ラインスターなど50年代60年代の米英SFを読んだことがSF少年たる私の原型を作っているように思う。当初、「進撃の巨人」を見始めた時、脳裏に浮かんだのがこの作品だった。
オマージュを込めて
一昨年に書き終えてリリースした自作「不死の宴 第二部北米編」は1956年の北米東海岸を舞台にしているので、当時のワールドコンなどSFファンダムに対するオマージュも入れてある。本来は、冷戦期で、共和党のアイゼンハワーが大統領に再選される選挙選が背景に流れるのだが、同時にその頃のSF界では、ハインラインの「夏への扉」とか、マシスンの「地球最後の男(われは伝説)」などの名作が次々と生まれている。
そこで、作品の中でマシスンとロジャー・コーマンを狂言回しに使ってワールドコンの話題などを語らせたのだ。
この総解説集を手元に置いて、これからかつて読んだ作品のブックガイド書いてこうと思う。私のブックガイドは、本の紹介であると同時に、その作品を通した私の読書体験談でもあるからだ。
(追記)
今にして思うと、教員だった父は書籍代を経費として計上できたのだと思う。だから買ってくれたのだ。今の自分があるのは父のせいではある。
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