ブックガイド(71)「ミクロ・パーク」(J・P・ホーガン)創元SF文庫

(2004年 05月 04日 「読書記録゛(どくしょきろぐ)」掲載)

 読書マニアである私には、財布の中身がどれほど少なかろうと、明日のたばこ代に事欠くことになろうと、それでも本屋で「手に取ったとたんレジへ行かねばならない」という本が存在する(←こう書くのは何度目だ・笑)。

 まだ十五歳のケヴィンとその友人は、父親の会社で工作用の超小型ロボットの開発現場に足を踏み入れた。脳神経に直結して操縦する超小型ロボットでさらに小型の工作機械を操りナノマシンを造るのである。
 彼らはその極小ロボットを裏庭のミニチュア世界のなかで操り、戦闘ゲームを楽しむ。このミクロロボットの秘密を狙うライバル企業の陰謀に、少年達がロボットを使って戦いを挑むという話。ナノテク+仮想現実技術のハードSFサスペンス。
 ホーガンのSFは「星を継ぐもの」以来、ずっと読んでいるが、まったく裏切られたことがない。ハードSFとして揺るがないものがあるとでも言えるだろうか。
 特にこの作品は、入院中に読んだと言うこともあり印象的だ。
 少年が主人公で、ライバルとの戦いがある、ということで、まさに「ハリウッドで映画化してよ」、というホーガンのメッセージがビシバシ伝わってきます。作者名を伏せて読むと、まるでマイクル・クライトンが書いているのかと思うくらい(笑)。ま、それだけ面白く仕上がっている。
 余談であるが、小学生の息子が、始めて読んだ大人の文庫本がこれ。その息子は今、私と大須電脳街を徘徊する理系オタクになっている。
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作者ジェームズ・P・ホーガンのホームページ 日本語版(作者本人が創っている!)

(2023/11/14 追記)
2010年に他界したジェームズ・P・ホーガンは、50年代に登場したハインラインの再来のような印象がある。80年代から2000年代にかけて、「星を継ぐもの」シリーズなど、「これぞSF」という作品を連発した作家で、これほど日本のSFファンから愛された作家も珍しい。
この「ミクロ・パーク」など、スティーブン・スピルバーグが映画化しそうな物語である。

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