映画レビュー(23)「哭声/コクソン」

賛否両論の訳



 この作品は韓国のナ・ホンジン監督が描くオカルトホラーである。
 田舎の村で起きる謎の家族惨殺事件。容疑者は何かに操られたようで不可解な事件である。村の外れに住み着いた日本人画家(國村隼)が関係しているのではないかという噂が、やがて主人公の警官の心にも忍び寄る。
 実に面白い作品だが、日本では「日本人を悪魔扱いしやがって」という声が右側から上がった記憶がある。
 普段から「ネトウヨ」とか「反知性」とか言われる私だが、これには「わかっちゃいねえなあ」と思い、右側の界隈の単純さに頭抱えた
 この作品は、「日本人は悪魔だ」という映画ではなく、「村を滅ぼそうとした悪魔は、何故、日本人の姿を借りたのか」という映画なのだ。

 相手が日本や日本人だと解ったとたん、冷静ではいられなくなる韓国人や韓国社会のメンタリティに対するナ・ホンジン監督の痛烈な皮肉である。

 ネットでの評価でも、そこまで頭が回らない界隈が叫んでいてみっともない。

 インターネットの集合知は自分の気づきなどで大変役に立っているが、ネットにはもう一つ大事な役割がある。メディアが紙や電波など限られた人間にしか意見発表のないメディアだとすれば、ネットは誰でも意見の表明が可能なメディアだ。
 そこで、今までは目に入らなかったレベルの人たちの意見や意識が可視化されたのだ。
 この作品だけでなく、映画や小説などで、とんでもない解釈をする人や、物事を字義通りにしか読めない人(反語的表現とかが理解できない等)の存在が明らかになってきているのだ。

 この作品と、そのレビューを読みつつ、そんな気持ちを抱いたのだった。

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