ブックガイド(89)「オオカミの護符」

今回も私の脳内の稗田礼次郎先生と宗像伝奇教授が「読むべし」と告げた本。

 著者が実家で目にしたのは、犬のような獣の描かれた一枚の護符だった。
描かれていたのは「オイヌさま」。
 高度成長期に、小さな村から住宅街へと変貌を遂げた神奈川県川崎市宮前区土橋で古くから農業を営んできた著者の家の古い土蔵に貼られた「オイヌさま」に導かれるようにして、御岳山をはじめ関東甲信の山々へ、護符をめぐる謎解きの旅が始まる。
 民俗学の本というよりは、それを探訪する旅の記録的な本。それだけに面白く読みやすい。
「オオカミの護符」

同様の本はもう一冊ある



 
「オオカミは大神 狼像をめぐる旅」
こちらはフォトルポルタージュ。前の書と合わせて読むとより面白い。
日本全国のオオカミ(大神)信仰を追っている。
「オオカミは大神 狼像をめぐる旅」

犬神信仰

 同様なオオカミ像に通じる犬神信仰は、一種の憑き神で、狐憑き、狐持ちなどとともに、西日本に最も広く分布する犬霊の憑き物(つきもの)だ。
 これを初めて知ったのは平井和正のウルフガイシリーズというSF作品だった。今書いている「不死の宴」というシリーズは、この作品に対するオマージュにもなっている。
 少年時代から、SF小説を入り口にして各種のジャンルに興味を持ったのだった。私はSFで育ったともいえる。悪くない。

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