ブックガイド(60)「格闘技「奥義」の科学―わざの真髄」(吉福 康郎) ブルーバックス
武道に科学を導入した初めての書
(2004年 04月 01日 「読書記録゛(どくしょきろぐ)」掲載)
神秘と伝説のベールにくるまれていた、「奥義」。
例えば、手を触れているだけで相手を飛ばす「寸勁」は、気ではなく技術であることを科学的に解明していく。また、空手の蹴りとキックボクシングの蹴りを、「突く」と「叩く」の違いで明らかにしたり。これは武道・武術修行者でなくとも目からうろこが落ちる面白さ。
ましてや、武道をやっていた、やっている人には必読でしょう。
以下が内容↓
目次
第1章 突きと蹴りの奥義
第2章 投げの奥義
第3章 あたりの奥義
第4章 押しと突っ張りの奥義
第5章 デモンストレーションの奥義
第6章 受けの奥義
第7章 組み手の奥義
終章 最強格闘技は存在するか?
また作者の吉福氏には、「最強格闘技の科学―最新スポーツ・バイオメカニクスが教える“強くなるコツ”」という本もある。これもまた面白い。
格闘技「奥義」の科学―わざ...ブルーバックス (B-1083)
(2023/10/25 追記)
突きや蹴りの重さは、自分の体重と移動の距離で生まれる。ところが、その重さを移動せずに出すのが「寸勁」なのだが、じつは水平方向には動いていなくとも腰を落とすという垂直方向に動いている。しかも重力の加速度も加わり、その反動で突きは重くなるのだ。
また、小柄な女性の「重い突き」も、実は突進してくる大きな相手の勢いと体重を利用していたりする。
そんな「こつ」に気づく体験、実際に武道を修行しているとちょくちょく出会う。それを言葉と理屈で伝える最初の本が、この書だった。
実は私も、十数年ぶりに通った少林寺拳法の道院で同じような体験をした。三級拳士の逆技で通常は両手を使う技を、六段の拳士は片手で掛けてくる。簡単に逃げれそうなのだが、手が吸い付いてくるように離れない。
実は、掛けられた腕が逃げる方向に巧みに追い込んでくるために、「まるで吸い付いている」ように感じるのだ。高段者の魔術のような技も、必ず理がある。それこそが面白いのだ。
最近はNHKの武道番組「明鏡止水」がそれを描いていて面白い。いい時代になったと思う。
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