小説【再会】 リゾート#3

夏も真っ盛りだ。
聡と淳美を見送ったのが遠い昔のようだ。

毎日の忙しさがいつまで続くのかも判らない。
日々、売店の喧噪だけが僕を支えている。
そんなある日。

「あの~、すいません・・・・。これ宅急便で送りたいんですけど・・・。」
「はい~。ありがとうございます!ご自宅用ですか?」
「人に贈るんですけど・・・・。」
「これなら箱があるはずなんで、ちょっとお待ち頂けますか?」
「はい。」

ぱっと見、正直地味目だったけど、
清楚で細身の小さい姿はどこかで見た気もした。
ショートヘアー好きな僕の好みにはばっちりだ。
白いワンピースがよく似合っていて、黒目の大きな可愛い子だ。

でも、きっとそれは勘違いだ。
見間違いなんて良くあることだし、いちいちそんなこと言ったら安いナンパだろう(笑)

「健太~!これかぁ!」
「ああ、それっす!やっさん、ありがとうっす。」
一緒になって探してくれていたやっさんが平たい白い箱を掲げていた。

長野の野鳥がプリントされたお皿は人気が高く
飛ぶように売れる。
部屋に飾れるように足までついているのだ。

バイトの先輩であるやっさんは気持ちの良い男前だ。
ばりばりに働くし、お客さんから連絡先をもらったりもしている。
あんなにもてたらさぞや気分もいいだろうに、
「彼女、いるんで・・・。」と一々律儀に断っている。

でも、それは嘘なのだ。僕は知っている。
接客業の常でお客さんともめ事やゆくゆくのトラブルに
ならないように・・・との心構えだった。

「はい。お待たせしました。今から包装しますんで、
もうちょっとだけお待ち下さい。」
「忙しいところにごめんなさいね・・・。お願いします。」

「それではこちらでご住所をお書き下さい。直接、お送りしますか?
ご自宅にお送りしてから手でお持ちになりますか?」
「渡すのは手渡しするんで・・・・。」
「かしこまりました。箱の中に手提げをお入れしておきます。発送伝票の方、お願いします。」

発送伝票も書き終わり、会計も済ませた彼女は
「それではお願いします。」
と、深々と頭を下げて店を出て行った。

土産屋の売店でなんて丁寧な。

いいとこのお嬢ちゃんかね。
そんな戯れ言を言いながらやっさんと忙しさの波にまた飲まれて行った。

その出会いが「再会」になるのは
年末まで待たないといけないのだが
今はまだそれは知るよしもない。

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