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【医療ヘルスケア】日系企業の海外展開事例集:総合商社 ✕ アジア新興国ver.

こんにちは!
メプラジャパンCEOの佐藤創(さとうはじめ)です。

2013年頃から、医療ヘルスケア業界参入への関心を高める企業が年々増えているように感じています。国内では非医療業界からの参入が増えてきていますが、一方で、アジア新興国において医療業界・非医療業界の両方の企業が海外展開を加速しています。

特にここ 3年ほどでその動きは増えてきており、東南アジア・インドなどで日系企業の方とお会いすることも増えてきました。

今日はそんな中でも、日系総合商社の海外展開事例についてご紹介します!今回は大企業がメインとなりますが、大企業はアジア新興国でもスタートアップへの出資・協業に積極的です。その動向の一部をお伝えできればと思います。

※ 注:仕事柄、各社の方とお会いすることも多いのですが、ここではIR資料など公表されている情報から各社の動向をご紹介します。


総合商社の動向

大手総合商社は各社が違ったアプローチでアジア新興国市場に参入しています。病院という場を獲得していく or 自らつくる、病院の関連機関(検査会社等)や医薬品・物流・保険など周辺産業に参入する、スタートアップへの投資・協業、など。日本国内での医療関連事業の強みや、海外でこれまで築いてきたネットワーク基盤などを活用しています。

▷三井物産

他社に先駆けてアジアの医療ヘルスケア市場への事業展開を進めていったのは三井物産です。

アジア最大・世界第2位の病院グループ「IHH」への2011年の出資(約900億円)によってシンガポール・マレーシアを中心に病院経営事業に参画しました。その後、別の病院グループ「コロンビアアジアグループ」への参画、透析クリニック「DaVita Care」のアジア展開、「PHC(パナソニックヘルスケア)社」への参画など次々と巨額出資による経営参画をおこなっています。IHHには、2018年末に2300億円の追加出資を行い筆頭株主になりました。

病院という「場」を基軸に成長戦略を描いています。

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(三井物産インベスターデイ2019 資料より)

目指す姿は、アジア最大の医療データプラットフォーム。

三井物産の取り組みは、NewsPicks のこちらの記事も分かりやすいです。(アジアヘルスケア市場の魅力に関する説明もとてもわかりやすい!)

ちなみに個人的には、今年6月に発表された中国での1000億円規模の医療ファンドの動向が気になっています。

▷豊田通商

豊田通商は、先にご紹介した三井物産のような出資による既存グループへの参画ではなく、0から病院や医療関連施設の開設・運営を行っています。

2014年3月、インド南部の主要都市バンガロールにて、「サクラ・ワールドホスピタル(SAKRA WORLD HOSPITAL)」を開業。セコム株式会社の子会社「セコム医療システム株式会社」との共同経営です。

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(SAKRA WORLD HOSPITAL:HPより

日本式のノウハウ、特にトヨタ式「カイゼン」などを病院経営に活用しています。コンセプトなどは豊田通商HPでも紹介されています。現在はインドでの病院経営に加えてインドネシアでの検査センター運営なども行っています。

また一方で、アフリカ大陸でのプレゼンスが非常に高い豊田通商は、2012年にフランスの商社「CFAO社」への資本参画によりそのプレゼンス・強みを強化(アフリカ53ヶ国をカバー)。CFAO社のヘルスケア事業のさらなる展開や周辺領域への投資・事業拡大も行っています。

▷三菱商事

三菱商事は日本国内の医療ヘルスケア事業としては「エム・シー・ヘルスケア株式会社」等による医療材料関連事業が好調です。その強みを活かし、東南アジアでも同領域にて事業拡大を進めています。

2018年には東南アジア8ヶ国で販売事業を展開する「IDS Medical Systems Group」への出資、また株式会社ホギメディカルとの合弁会社「HOGY Medical Asia Pacific」社の設立を行いました。

一方で、ミャンマーの首都ヤンゴンにおいて300床規模の総合病院を開設する計画も発表されています。

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(ミャンマー新病院の外観:PR

▷伊藤忠商事

2017年、インドネシア大手財閥「Lippoグループ」の医療関連子会社「Lippo Karawaci」提携しました。傘下にはインドネシア最大の病院グループ「シロアム病院」があります。

提携においては、インドネシア国内での事業に加えてアジア周辺国での病院運営や投資業務を行うとされており、続々と投資・協業を進めています。

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(MRCCC Siloam Hospitals Semanggi )

また一方で、2019年2月にスタートアップへの投資として、東南アジア各国にて医師SNSを展開する「Docquity」社との資本業務提携が発表されました。投資だけではなく様々な事業面での支援が行われています。

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(Docquityサービス概要:伊藤忠商事PR

▷丸紅

丸紅は、今後 3年でヘルスケアなどの新規事業に2000億円を投資する計画を定め、アジアにおいてもヘルスケア事業への本格参入を表明しています。

2017年頃から、フィリピンやインドネシアにおいて、現地医療機関グループ等と連携した検査サービス提供を開始しています。(フィリピン PRインドネシア PR

また今年11月には、九州大学病院と提携し、これから東南アジア・ロシア・中国などにおいて共同事業を行っていくことを発表しました。

▷住友商事

2019年4月、マレーシアにおける「マネージドケア事業」への参入が発表され、現地事業者2社「PM Care」「Health Connect Holdings」を子会社化しました。

マネージドケアは、公的医療制度が充実していない国で発展しつつある管理医療システム。民間医療保険会社、マネージドケア事業者、医療機関の3事業者が連携して医療サービスを提供している。より良質で安価な医療の推進と、個人の健康管理向上を目指す仕組み。(住友商事 PR

個人的に注目しているテーマの1つだったので、この発表には驚きました。他社が病院や検査センターなど医療提供側に近い領域をおさえていく一方で、保険会社とも深い関わりのある立ち位置での参入。興味深いです。

また、2019年3月にはシンガポールのスタートアップ「CXA」社への出資も発表。こちらも保険や企業従業員の健康増進が関わる領域です。


以上です!

各社違った取り組みで、今後の展開が楽しみですね。

今回は商社のみをご紹介しましたが、これ以外にも医療機関、薬局、メーカー、製薬、保険、医療IT企業など様々な大手企業が進出を始めています。また、日系スタートアップでも「Born Global」で最初から海外市場を前提にしたサービス開発・展開を進める企業も増えてきました。
これらの事例はまた別の記事でご紹介できればと思います。

ちなみに、医療機関・メーカーに関しては以前こちらの記事でご紹介したサイトなどで多くの事例が載っていますので、興味のある方はぜひお読みください!

今日はここまで!
それではまた次回!!

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