新興国で「どこでも誰でも」受けられる医療は存在しうるのか?/新興国の医療提供体制
こんにちは!
メプラジャパンCEOの佐藤創(さとうはじめ)です。
カンボジアに移住したのは 2012年10月。
そこから 5年をがっつりカンボジアで過ごし、2017年からはカンボジア、東南アジア・南アジアの国々、日本を行き来する生活をしています。
この 7年ほどの間に、各地の様々な病院・クリニックなどを見て周りました。
最先端の機器・設備でホテルみたいな病院から、ほったて小屋でベッドには血がついたままの不衛生な簡易診療所まで、およそ 300施設以上を見学してきました。(病院見学が趣味で、旅行中にふらっと行ったりもします。)
東南アジアなどの新興国では医療課題が山積みです。
病院などの医療インフラの不足、医療人材、法規制、医療保障制度、疾患の変化、などなど。医療格差は貧富の差からくるだけでなく、地域格差・情報格差などが絡まり合って引き起こされています。
この noteでは、いくつかの視点から新興国における医療の現状をご紹介していきたいと思います。今回のテーマは「医療提供体制/医療を受けるための行動」について!
医療提供体制/Health Seeking Behavior
次の図は、市民・患者がどのようなステップで医療(医療施設)を選ぶか(Health Seeking Behavior)を示した図です。ここではインドネシアを例に、所得と医療提供体制によって区分されています。
医療提供体制は、その機能・設備などをもとに「1次・2次・3次」と分類されています。
一般的に、1次医療では、かかりつけ医が初期治療・予防ケアを提供します。1次医療は「プライマリ・ケア」とも呼ばれます。入院や専門外来が必要になれば地域の中核病院でケアを受けるのが 2次医療。さらに高度・先進的な医療が必要になれば大規模病院での 3次医療になります。
3次医療機関は首都などの中心地に集中していることが多く、2次医療機関は地方のハブ都市にあり、1次医療機関は中心地にも地方にも点在しています。
(医療国際展開カントリーレポート・インドネシア編 より引用)
これらは東南アジア・南アジアの国々でも比較的共通している枠組みです。しかし実際は、この流れ通りになっていないことも多いのが現状です。必ずしも 1→ 2→ 3 とステップを踏むわけではなく、いきなり3次医療機関を受診したり、海外にメディカル・ツーリズム(医療渡航)したりします。
プライマリ・ケアの入り口は「薬局」
日本では、「ちょっと風邪かな〜」と思ったとき、薬局でOTC医薬品を買うか、近くのクリニックのすぐに行って診察を受けるのではないでしょうか。
新興国では、クリニックに行く前に薬局に行くことが非常に多く、プライマリ・ケアの入り口は「薬局」です。
新興国は医療保障制度が未整備な国が多く、自己負担率が非常に高いです。そのため、クリニックに行く前にまずは薬局で薬剤師に相談し、薬を処方してもらい、それでも治らなければクリニックを訪問します。
(カンボジアの薬局)
国によっては、医師からの処方箋なしに処方薬を提供する薬局も多く、また医薬品の品質管理などにも課題があります。
mClinica などのスタートアップは、この「薬局・薬剤師」という点を押さえた課題解決をおこなっています。
(薬局も対象層によって色々)
ちなみに、富裕層の場合は薬局に行かずにいきなり民間クリニックに行く場合が多い印象です。(カンボジアの富裕層の中には、ちょっと風邪っぽいからと飛行機でタイまで受診しにいく人もいました。)
では次に、それぞれの医療機関をみていきましょう。
1次医療機関(プライマリ・ケア)
まずは 1次医療機関(プライマリ・ケア)から。
公立(Public)と民間・私立(Private)に分かれます。
公立の施設は、同じ国の中でも地域によってレベルが大きく異なります。
医師がおらず必要な医療資材もない施設もあれば、検査機器や治療設備がしっかり整っていてITシステムにも対応している施設もあります。
民間の施設の場合は、対象患者層(所得等)によってレベルが大きく異なります。
日本のように「診療報酬点数」が定められていて「どこの医療機関でも同じ料金」という国は無く、病院ごと・医師ごとに別々の料金設定がされます。
そのため、所得によって受けられる医療に差が生まれます。
富裕層向けの場合は内装も華やかでサービスが丁寧な施設も多くなります。
2次医療機関(セカンダリ・ケア)
地方の中核病院である 2次医療機関では、入院対応が可能になります。
しかし州ごとに予算が異なり、提供できる医療にも差が出てしまいます。
(2次医療施設といえど、予算が足りず入院設備が不十分な地域も多い)
3次医療機関
都市部の 3次医療施設に関しては、同じ公立病院でも、予算配分次第で医療の質に差が出ます。専門病院を設立できる公立病院ができる一方で、一般病棟の設備が不十分な施設があるように差がうまれます。
民間病院になるとその差はさらに顕著になります。
メディカルツーリズム
メディカルツーリズム(医療渡航)に関しては、もはや富裕層だけのものではありません。(上記の図で赤色の四角を追加していますが、)中間層・貧困層でもメディカルツーリズムで海外に行きます。
信頼できない自国の医師に過剰請求されてさらに治らないよりは、医療費が高くなって滞在費がかかるとしても近隣の有名な医師を受診しようとします。
近年のアジア新興国では、タイ・マレーシア・インドにメディカルツーリズムする患者が急速に増えています。
(Bumrungrad International Hospital)
医療提供のプロセスを把握することは、日本以外の新興国などで医療関連サービスを提供するには必須ですね!
次回以降では、医療環境をもっと詳しく見ていこうと思います!
最後まで読んでいただきありがとうございます!!
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