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オンゴーイング!はじまりの美術館「(た)よりあい、(た)よりあう。」

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プレイバックはじまりの美術館

大政:それでは、久しぶりに「オンゴーイング!はじまりの美術館」を行います。はじまりの美術館では、2020年の春ごろに新型コロナウイルスの感染拡大の影響で臨時休館をし、そのころ「プレイバック!はじまりの美術館」という名前で過去の展覧会を振り返る企画を行っておりました。その後無事に再開館をしたのですが、不定期で、開催している展覧会についてスタッフで語り合って紹介するという取り組みを行っています。

岡部:今回は開催中の企画展「(た)よりあい、(た)よりあう。」をオンゴーイングします。はじまりの美術館では、岡部・小林・大政の中で順番に企画担当を回していますが、今回の主担当は小林さんですね。この展覧会を企画したきっかけはなんですか?

小林:これまでさまざまな企画を実施していく中で、頼りあったり、ある意味、依存ともいえるような表現があると考えていたことから着想しました。また、ちょうど震災10年目ということろもありますが、「復興」ということを考えることにもつながると思いました。ちょうど震災5年目のときも企画展を担当し、そのときは「絶望でもなく、希望でもなく」という展覧会でしたね。今回は復興ということを自立した状態と考えた時に、人や地域が自分一人でなんでもできるってこいうことではないと考えました。むしろ、いろんな人やものに頼りあったり、寄りあうことが本当の意味での自立ではないかと考えて、今回は「頼る」をテーマに企画展を考えてみました。

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大政:自立に関して、東京大学の熊谷晋一郎さんがインタビューなどで「自立とは依存する先を増やすこと」とおっしゃっていますよね。とても印象に残っている言葉です。

岡部:そうですね、このテーマは「障害」っていうことも結構クロスオーバーしてるなと思いました。自分も初めて小林さんから企画の構想の聞いたときは、その熊谷さんの話が頭に浮かびました。

小林:そうですね、とても共感できる言葉です。今回、趣旨文でも入れましたけれども、何かに頼りすぎると依存になってしまうし、逆に頼らな過ぎると孤立してしまうと考えられますよね。やっぱり頼るっていうことが、依存も含めて、いろんなことを考えるきっかけになるんじゃないかと思いました。

大政:展覧会のタイトルに今までなかった丸括弧()がついている展覧会ですね。どうして括弧をつけたんですか?

小林:括弧の(た)を外すとですね、「よりあい」「よりあう」とも読めるようにしてみました。寄り合いといえば、この美術館が開館する前から続けている集まりの名前でもあります。ここ2年、3年、あまり定期的に開催できてなかったことに加えて、去年はこのコロナの期間で集まるってことがなかなか難しかったですよね。今年もそんなに落ち着いてるわけではないんですが、何か小さな規模でも改めてこの「たよりあう」「よりあう」ってことも踏まえて、寄り合いが開催できたらいいなと思いました。

岡部:自分はここの括弧がついたタイトル見たとき、「た」がなくても成立するということとあわせて「他とよりあう」、自分以外と寄り合うみたいなイメージもありました。「自立」とは言ってるけど、自分だけじゃ完結しない、みたいなニュアンスも含まれてるような感じもすごくいいなと思ったのを覚えてます。

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大政:なるほど、そうとも捉えられますね。そして今回は、展覧会のチラシやメインビジュアルも新しい取り組みですよね。

小林:今回は「無意味、のようなもの」展に続き2回目の、山形の𠮷田勝信さんにデザインしていただきました。𠮷田さんと企画段階で、一度Web会議をしましたが、その段階ですでにデザインの仕上げ部分を誰かに描いてもらうというアイディアがありました。最初に聞いたときは、𠮷田さんが考えた図案を誰かに描いてもらって、それをメインビジュアルに印刷するのかなと思ったんです。ただ、よくよく聞いてみるとどうやら印刷したもの1枚1枚全て手描きしたいということだったので驚きました。

大政:すでに𠮷田さんが山形のコーヒー屋さんのパッケージデザインで似たようなことを実践されていたのを知っていたので、イメージはしやすかったですね。うまくやればできそうな気もするけど、納期やクオリティを考えるとちょっと勇気がいることでしたよね。

小林:全部を会期前に描き切らず、少しずついろんな人に描いてもらえば何とかなりそうと思いましたし、何よりアイディアとして面白いですよね。事前打ち合わせのとき岡部さんは参加されてなかったですが、最初にこの話を聞いたときどんな印象でしたか。

岡部:そうですね。やはり時間的な制約が一番気になりましたが、すごく面白いと思いました。「手描き印刷」と名付けられて、常設ワークショップにもなっていますが、来館したお客さんが、展覧会の企画趣旨をつかみやすいというか、一つの入り口になってるなと感じます。

大政:人によって反応も様々で面白いなと思います。チラシは発送分でまずまとまった数が必要でしたが、はじまりの美術館を運営している安積愛育園の事業所・パッソやプリモの方々に頼って描いてもらえたのもよかったです。描いてもらっているところに伺って撮影した映像を、展示室入り口で流しています。

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小林:今回は6組の作家さんに参加いただいていますが、もう入り口から濃いですね。まずは「しらとりけんじ」さん。しらとりさんは、2019年に開催した「わくわくなおもわく」展の時に、作家の川内有緒さんの取材に合わせて一緒にいらっしゃったのが出会いでしたよね。

大政:しらとりさんは普段水戸を拠点に全盲の美術鑑賞者としても活動されていて、そのときは当時水戸芸術館に勤められていた佐藤麻衣子さんと川内有緒さん、川内さんの娘さん、しらとりさんの4名で美術館にいらっしゃいました。しらとりさんのことは、以前からメディアなどでも拝見しておりましたが、お会いしたのはその時が初めてでしたね。その鑑賞のときに、しらとりさんがちょこちょこと写真を撮っているなぁと思った記憶があります。

岡部:その後の別の機会に、水戸芸術館で開催されたヂョン・ヨンドゥさんの展覧会で、しらとりさんが撮影した写真が作品に使用されていたということもお伺いしていました。なので、最初はしらとりさんが撮っている写真を展示してもらうようなイメージでお声がけしましたね。

小林:そうですね。写真ってやっぱり視覚的な表現だと思っていたので、目の見えないしらとりさんが写真を撮ってるっていうのを聞いたときにちょっと驚きましたし、印象に残っていました。今回頼るっていうことをテーマに考えた時に、視覚に頼らない写真というものが企画をより深めるのではと当初は考えてました。

大政:ところが打ち合わせをする中で、「しらとりさんが滞在するのが一番面白いんじゃないか」っていう提案を、佐藤さんからいただいたんですよね。しらとりさんご自身は写真はシャッターを切った瞬間に終わっていて、「見返すことのない日記」とおっしゃっています。なので、写真の展示自体はわりとお任せしますという感じだったのですが、「滞在」と聞いた時にしらとりさんにスイッチが入ったように気がします。しらとりさん自身も少し前からアーティストインレジデンスのようなことをどこかでやってみたいっていう想いがあったそうで、「それだ!」といった流れになっていきました。

岡部:しらとりさんが滞在の方向で話が進んでいくのを知ったときは、長期間の滞在がどんなふうに展開していくのか期待もありながら不安もあったのを覚えてます。でも実際会期がはじまってみるとなかなか面白い展開が続いてますよね。

小林:最初は会期中のある期間に滞在するような感じかなとイメージしてましたが、実際は会期中ほぼ滞在しているというようなことになって、むしろ猪苗代に住んで、たまに水戸に出かけるといった形になりましたね。最近はもうおひとりで町内も歩かれているので、逆に私達も出会っていないような方々としらとりネットワークができてたり、すごく面白い展開になってるなと思います。もともとのお知り合いもしらとりさんに会いに来たり、しらとりさんを通して人の繋がりが広がっていますね。

岡部:猪苗代でも町を歩きながらどんどん写真を撮っていますが、見慣れた町が違って見えるのも面白いです。なんか、しらとりさんがある意味異質なものとして猪苗代に来たときから、だんだん時間が経つにつれてしらとりさんがいるのが当たり前な猪苗代になってきてるっていうのがなんかすごくいいなっていうか。ぜひそんなところも、美術館に来て感じてもらえたらいいんじゃないかなと思ってます。

小林:そうですね。ぜひ、しらとりさんに会いに来てください!

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小林:そして、隣の部屋に行くと「やわらかな土から」の「レコメン堂」の作品が展示されています。レコメン堂は、2019年に宮城県仙台市にあった「東北リサーチとアートセンター(通称TRAC)」というところで開催された展覧会です。私もそのときに拝見して印象に残っていたんですが、今回このテーマで展覧会を考えていたときに「レコメンド=推薦」っていうことが、誰かに頼らないと集まらなかったものって言えるんじゃないかなと考えました。また、それぞれ本当に有名無名問わずにいろんな表現が集まっているっていうのもすごく面白いなと思ったので、そういった表現の奥深さみたいなことも踏まえて紹介できるといいかなと思ってました。

大政:今回展覧会の全体の出展作家名は一応6組としていますが、実際はレコメン堂に参加されている方だけで23組いらっしゃるんですよね。さらにレコメンドした人とされた人がいて、関わった人を考えるとものすごい人数になってるなと思います。あと、いわゆる作品的なものに限らず、”表現のようなもの”を募集されているので、民話語りがあったり、踊りのようなものや、日々の積み重ねで生まれてきたものだったり。様々な身の回りにあるものが集まっていますよね。

岡部:やわらかな土からは、三つの団体で構成されてますよね。

小林:そうですね。一昨年の「あしたと きのうの まんなかで」展に参加いただいた瀬尾夏美さんが代表の「一般社団法人NOOK」と「3.11オモイデアーカイブ」、あとは「NPO法人エイブル・アート・ジャパン」の3団体です。構成団体の特徴から、やっぱり障がいのある方であったりとか、震災に関わってきた方が多く出展されていて、震災から10年を意識したこの企画展に合っていると思いました。

大政:はじまりの美術館が委託を受けて実施している「きになる⇆ひょうげん」もそうですが、障がいのある方が参加する展覧会って、他薦が多いんですよね。例えば支援員の方だったり、ご家族の方だったり、本人以外の方が「いいな」と思って応募されることが多いです。一方で、いわゆる一般的な公募展だと基本的には自薦なんですよね。このレコメン堂では障がいの有無も問わず、ただこの人のこの表現のようなものを誰かに伝えたいっていうところから集まってきた物たちなんだなっていうのをしみじみ感じます。

小林:その“表現のようなもの”というのがレコメン堂の趣旨の肝なのかなと思います。もちろん、いわゆる美術らしい作品もありますし、みんな何かしらの表現ではあるんですが、“表現のようなもの”って言ったときに、レコメンドする人たちの敷居が下がりますよね。また、レコメン堂は展示までのプロセスが、ただ推薦して終わりではなくて推薦した人とやわらかな土からのチームが話し合いをして、展示の方法であったりとか出展の方法とかまでやりとりされているのも興味深いです。

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大政:次の作家は平野智之さんですね。平野さんは以前からいろいろな展覧会などで作品を拝見していて、いつかはじまりの美術館でもご紹介させていただきたいなと思っていた方のお一人でした。平野さんの作品には、「美保さん」という方がよく登場されるんですが、美保さんと平野さんの関係性が頼り合っているというか、美保さんがいたからこそ生まれた平野さんの表現であり、そこに面白さもあって今回お声がけしました。

小林:平野さんは、本当に良いバランスで美保さんに依存してるようにも感じれる作品で、美保さんを主人公にしたストーリーを今回は2作品ご紹介しています。それに加えて、美保さんの絵描き歌と、平野さんにとってもう一つ重要なモチーフである土足の絵描き歌を描いた作品も展示しています。

岡部:平野さんの作品は、ストーリー仕立てにはなってるんですが、単体で見るとどんな話か汲み取りにくいというか、逆になんだろうと思わせる力が強いというか。いろんなことを想像させられる作品だなあと前から思っていました。今回、平野さんの自撮り写真のコラージュがはじめて展示されましたが、あれもすごく面白いなと思います。平野さんがどんなことを考えながら、この写真を組合わせてるんだろうっていうことを想像するのもまた面白いですね。

大政:今回出展のご相談をしたときに、平野さんが震災に関する作品を作っていたり、被災地に想いを寄せているということも知ることができました。展覧会の中では、その「震災バッジ」や震災に関わる作品も展示させていただいております。

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小林:そして次は漆器「めぐる」ですね。こちらは会津若松を中心に活動する、漆とロック株式会社さんが開発したものです。

大政:「めぐる」はダイアログ・イン・ザ・ダークさんとのコラボレーションで生まれた漆器でもあり、2020年にはグッドデザイン賞を取られたりとか、様々なメディアで紹介されていたりしていて気になっていました。漆とロック株式会社代表の貝沼航さんも、いつかはじまりの美術館で展示できたらと思ってくださっていたそうで、良い巡り合わせでしたね。今回は、美術館中央の正方形の展示室で、自然の循環と漆器の循環をテーマに展示いただきました。

小林:「めぐる」自体も以前から気になっていたんですが、今回のテーマを考えている中で伝統工芸を入れたいなと思ったんですよね。というのも、一つの器ができるまでに、木を切り出す人がいて、それを加工する人がいて、漆を掻く人がいて、もっと言うとそれぞれの道具を作る人がいて、本当にたくさんの方が関わっています。その道具を作れる人もそれぞれ日本に数人ずつしかいないという話も聞いて、本当にいろいろ頼り合って生まれてるっていうのが見えてくるなと。職人が減っているのはある意味危機的だと思うのですが、そういう構造みたいなことも、この展示を通していろんな人に知ってもらえたら良いなと思いました。

岡部:自然の循環と漆器の循環というところでは、頼るって聞くと人間同士が頼り合ってるイメージを抱きやすいですが、自然と人間みたいな観点もあるんだなと思いました。それを考えたときに人は自然に頼るけど、逆に人は自然に何か有益だったりもするのかなとか考えさせられました。人と人、人と自然というところの、頼りあう部分っていうのを改めて考えるきっかけにもなるのかなと思いました。

大政:今回展示の中で、貝沼さんは変化していく展示ということも意識してらっしゃってますね。その一つに、画家の浅野友理子さんに漆器ができる過程のスケッチを描いていただいています。会期中少しずつ作品が増えて、最後あと1点加わる予定です。また、展示室中央では「めぐる」の器を優しく触って、手触りを体感することができます。目を瞑って、座って、ぜひ実際に「めぐる」に触れてみてください。

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小林:次は、みずのき絵画教室ですね。「みずのき」は、はじまりの美術館の姉妹館でもある「みずのき美術館」を運営する法人・社会福祉法人松花苑の事業所でもあります。平野さんと同様に、いつかははじまりの美術館でお招きしたいなと思ってたところでしたが、今回趣旨に合う部分があってようやくお呼びできたという感じがします。

大政:京都府亀岡市にある「みずのき」では、1964年から1998年まで、日本画家の西垣籌一先生という方をお招きして絵画教室が行われていました。みずのき美術館はその絵画教室時代の作品をアーカイブしている美術館であり、今回の展示では、その絵画教室のメンバーから小笹逸男さん堀田哲明さん岩本勇さんをご紹介しています。また、作品とあわせて当時の絵画教室でのエピソードなども紹介しております。

岡部:みずのき絵画教室は日本で初めてスイスにあるアール・ブリュットコレクションに収蔵される作品が生まれたところでもあります。いわゆる「アール・ブリュット」は、専門の美術教育を受けていないとか、自分の心の赴くままみたいな定義が言われています。その中で、西垣さんという指導者がいることで、みずのき絵画教室はアール・ブリュットという文脈から外れるんじゃないかといった議論がされたこともありましたね。そういった、国内で「アール・ブリュット」という言葉の認知が広がり始めた頃から、いろいろと話題になってきた部分もありますね。

小林:そうですね、今回みずのき美術館のキュレーターである奥山さんと打ち合わせする中でもお話がありましたが、西垣さんが書かれた本を読むと、ただ一方的に技術指導をしていたわけじゃないってことが分かるエピソードがたくさんありました。やっぱり西垣さんが思い描く美術の理想があって、それを体現してくれるのがみずのき絵画教室のメンバーだったっていうことを感じます。なので何かを教えるというよりは、絵画教室を通して一緒に過ごす中で皆さんの力を引き出すような付き合い方をしていたんだなって思いました。メンバーの皆さんも西垣さんへの信頼があるからこそ何度も描き直すし、世界的にも認められる作品が生まれたり、そういった関係性が今回の企画展を深めていますね。

大政:特徴の一つとして、デッサンや色彩構成などの練習的な作品と、いわゆる本番というか、公募展などに向けた描いた作品をかなり意識的に分けていたのが、みずのき絵画教室の特徴でもあるなと思います。いろいろ見方があると思うんですが、練習の積み重ねが本番の作品でも良い形で出てきているんじゃないかなと感じました。特に小笹さんの猫のようなウサギのような生き物は秀逸だなと思います。

岡部:私は堀田さんの家が好きですね。

大政:堀田さんの作品も本当に圧巻ですよね。みずのき美術館さんの「みずのきアーカイブズ」は、はじまりの美術館のアーカイブ事業でもとても参考にさせていただいて、約2万点の作品がアーカイブされています。ぜひ亀岡に行く機会がある方は、みずのき美術館でアーカイブをご覧ください。

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小林:最後は笑達さんですね。笑達さんといえば似顔絵ですよね。かれこれ4、5年東北ツアーという形で夏頃に開催していますが、毎回満員御礼で人気の企画です。

大政:今回、企画展を考えるなかで、最初に岡部さんからご提案がありましたね。

岡部:そうですね。SNSで目にした最近の笑達さんの個展の様子がとても印象的だったこともありますが、今回の企画テーマから笑達さんの似顔絵会が浮かんだんです。描かれるお客さんと描く笑達さん、どちらもいないと成立しない。描く、描かれるという関係性が、頼り頼られっていうイメージと重なるんじゃないかなと思って提案させてもらいました。

小林:私が笑達さんって聞いたときに思い浮かんだのは、今回展示されている作品のイメージでしたね。ちょうど去年の似顔絵会のときに、似顔絵のブースまわりに初めて似顔絵じゃない作品を展示されたんです。その時に笑達さんに聞いたら、もともとの故郷である和歌山に新しく家を建てていて、その家を建てる中で出てきた土を使って描いたんだとおっしゃっていて、その絵がすごく記憶に残ってました。それまでの人から、さらに自然とかなんか目に見えないものとか、そういったものまで描きこまれてる気がして、そういったところも踏まえて笑達さんに打診しましたね。

大政:特に今回のために描き下ろしていただだいた新作の「世界」という作品は、展示室の壁いっぱいに広がるとても大きな作品ですよね。和紙を下地にして土や石灰などで描かれているのですが、作品をお借りしに伺った際は、ついさっき完成したっていうような感じで。展示室に飾った後もしばらく油絵の具の匂いや和歌山の自然の匂いを感じることができました。アニミズム的なことだったり土着的なことだったり、「世界」と聞いたときにいろいろな物語、歴史なんかを想起させるような作品なのかなと思いました。

小林:そうですね、最初に現場で地面に広がっているのを見たときのイメージと、実際展示してみてのイメージが違って見えますし、見るたびにいろいろ感じるすごく力の込もった作品です。

岡部:実際に展示してスポットライトが当たったとき、ふわっと世界が浮かび上がってきた瞬間があって、すごく印象的でした。この絵は笑達さんが屋外で描かれていましたが、そういったことができるのも自然に囲まれた和歌山の環境ならではとおっしゃってましたね。

小林:ご本人は屋外で描きつつも、洞窟の壁画のようなイメージっておっしゃってたのですが、この美術館の一番奥の部屋で飾られている感じがまさにそんな風にも見えて、本当にこの美術館のために描いていただいた作品っていうのが実感できるような展示になってます。

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小林:今回は頼るというテーマに合わせて、普段自分たちが書いてる作家紹介のテキストも他の方に頼って書いていただきました。それぞれ、作家ご本人が書いていただいたり、その作家に近しい方に書いていただきましたので、そちらも読んでいただくとさらに作品を味わえると思います。
今回、なるべくいろんな人に頼りたいなと思っていましたが、当初の想定よりもいろんな人が関わっていただき面白くなったのかなと思ってます。なんか、改めて頼るってこと難しいなとも思いますね。関わる人が増えるほど自分たちだけではコントロールできなくなりますが、困ったときに頼れる人がいるのは本当に有難いですよね。最後までいろんな要素をなるべく引き入れていければと思うので、どうなっていくのかなと思いつつ、7月11日の最終日まで走り抜けれればと思います!

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企画展「(た)よりあい、(た)よりあう。」は、2021年7月11日まで、福島県猪苗代町にあるはじまりの美術館で開催中です!


出展作家のしらとりけんじさんの日記「けんじの日記」はnoteで、「けんじの部屋」の様子はtwitter等で更新中です。



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