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ふりかえると何もいない。

小学3年生頃、バス通学で30分ほどの場所から引っ越しをし、以前の自宅より通学時間がかかるようになりました。

それだけでも通学が面倒くさいのですが、さらに憂鬱な気持ちにさせるのが自宅近くにある歩道橋でした。

行きのみバスが通る大通りを渡るために使いますが、

毎回階段を登りきった後、少し歩いたところで髪の毛の結び目を強く引っ張られます。

後ろには、誰も、何もいません。

子供が転ばない程度の力ですが、不意に引っ張られるとバランスを崩しそうになり、心臓がバクバクしました。

当時の私の髪型はボブカットの前髪なし。
授業中に前髪がかからないようにゴムで結ばれてから家を出るのですが、
そこを引っ張られるのです。

引っ張られた後は、髪の毛がぐちゃぐちゃになっているので自分で髪を解き、そのままにしていました。

親からは毎回髪を解いて帰ってくる事で

学校で何かあったのか?
髪型が嫌なのか?

と問われましたが
どちらにも該当しないのと、
子供ながらあの出来事をどう伝えたらいいのか分からず、沈黙の日々が続きました。

親は髪の毛は結ばない方がいいのだろうと感じたようで、いつの日か結ばれなくなり

髪の毛が結ばれていないと
歩道橋で引っ張られない事に気付きました。

引っ張られないと分かってからは、疑問が湧きます。

あれは何だったのか?

小学校の図書室で怪談関連の本を読み漁りましたが、私の体験したような事は書いておらず

残念ながら、学校の怪談本に書いてあった「ババサレ」というお化けが私の中で印象が残り
しばらくババサレの恐怖に怯え、すぐにババサレのいなくなる呪文を唱えられるよう、左手の内側に「ババサレ」と書いて過ごす事になりました。

時が経ち、また引越しをし
あの歩道橋は使わなくなりましたが
バスで、あの歩道橋の下を通る事があります。

一体なんだったのか。
今となっても何もわからないのです。


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