創作とジェンダーバイアス

先に断っておきますが、本記事はジェンダーについて、フェミニズムについての議論や主張を求めているものではありません。単純に好きな漫画と、自身が創作に於いての固定観念を持ってしまっていた、という話。

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先日、大好きな楠本まきさんの新刊を購入しました。(新刊、といっても7月刊行だったので気が付かなかった自身を悔いましたが……)

前作『赤白つるばみ』と違い真っ白な表紙。楠本さんの描く線は相変わらず迷いなくしなやかで美しい。溜め息が出るとともに、楠本さんの作品を読むと大きく深呼吸したような、深い充足感に満たされます。

さて今回タイトルにあげたジェンダーバイアスとは。


社会通念上の性別に基づく偏見。固定観念。所謂『男の子なんだから』や『女の子らしく』といったもの。

作中では、新人漫画家の女性が少女漫画誌での連載に苦悩します。更には後任の編集者からのアドバイスは「読者がもっと共感できて、キュンキュンするようなヤツ描いて下さい」と言われてしまう。

新人漫画家の彼女だけでなく、作中の様々な女性が『悪意の無い』女性なんだから、という言葉に曝されていく。

その中で新人漫画家の女性の憧れの漫画家が言います。

「ジェンダーバイアスのかかった作品は全滅するといいなと思ってます」

と。ハイトウはこの言葉は楠本さんが『赤白つるばみ』を描きたい理由だったのではと思っています。

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上記の話が雑誌掲載された時、少々ネット上でも話題になりました。当時はその断片や賛否の意見などをさっと目を通しただけだったのですが、改めてハイトウ自身、ジェンダーバイアスに無意識に縛られて作品を書いていたんだなと気が付かされました。

そもそも、ハイトウとしての活動の始まりは『"女性向け"シチュボ台本』。
あくまでも"女性向け"だし、"女性だからこそ"楽しめるコンテンツはあると思うので、そこを区別することになんら問題はないと思っていました。


問題云々以前に問題視もしていなかった。


しかし徐々に書いていくことに行き詰まりを感じ、『書きたいものはあるけど女性向けではない』『しかし男性向けと銘打って書く作品なのだろうか』と、作品に何らかの定義づけ・読者層を絞らないと読んでもらえないと思っていました。

ところが拙作を音声化していただいた時に気付きました。
もともとは『女性向け』として男声で読む前提で書いたのですが、一人称を変え女声で読んでくださった方がいらっしゃいました。

一人称(俺→私への変更)以外は同じ内容なのに、後者を受け入れてくれる男性視聴者がいらっしゃるのです。

そもそも振り返ってみれば、ハイトウは『女性誌』『少女漫画誌』を殆ど読まずにここまで来ました。(もちろん作品単位で大好きな少女漫画はあります)
『女の子の為の』『女性の為の』と言われてもそこに読みたいものがなかったからです。
では、男性になりたい願望があるのかと言われればなんとも言えない。

そう考えると、今までは


・これは女性の為のお話
・あれは男性の為のお話
翻って対象ではない異性にはウケない。

というバイアスが掛かっていただけで、男女問わず好んでもらえるものは普遍的に好んでもらえるものはあるのだな、と思いました。

更に声劇になればより多種多様な登場人物を描けます。その上で、無自覚、悪意無くテンプレート的な女性像、男性像にならないような表現をしていきたいです。

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手前味噌になりますが、そう気が付かされた拙作と、男声Ver.、女声Ver.で音声化していただいたものをリンクしておきます。

【シナリオ】灰塔アニヤ
「好きなこと、辛いこと、はんぶんこずつ」
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13261195

【男声Ver.】ふたたび るびぃ様
https://t.co/4rQMqcC9j8

【女声Ver.】朝富やくも様
https://t.co/NV0T7bW6ih


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