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未だ聴こえない音楽の制作日誌-1- はじめに

現在、新しいアルバムを作っている。

2021年にリリースされれば4年ぶりのアルバムとなる。

まだ完成の見通しは立っていない。

だが「何か音楽を作りたい」という意欲は尽きることがないので、この発売日も締め切りも決まっていない、いつ完成するとも知れないアルバムを毎日作り続けている。

4年間、何をしていたか。

2017年に映画「ZAN ~ジュゴンが姿をみせるとき~」のためのサウンドトラックアルバムを発表して以来、私は制作の霧の中に佇んでいた。いわゆるスランプというやつなのだろうか、曲を作っても作っても「これだ!」思うものが出来ない。出来上がった曲に自信が持てない。曲を発表しないので、世の中に音楽家としてアピールする機会も減り、ついに経済的にも限界を迎え、2018年1月、就職という道を選んだ。それから2年間、私は会社員として働いていた。そこでの経験はおいおい触れていくことになるであろうから、今は省略するとして、2020年3月、私はまた音楽の道に戻ってきたのである。

会社で出会った人たちからは音楽の道を諦めて就職したのだろうと思われていたし、世間一般から見てもそれが普通であろう。だから、一度夢を諦めてまた同じ道に戻ってくるという珍しいタイプの人間かもしれない。確かにあまりのハードワークに自分の音楽のことを考える時間を得られない時はあった。だが実は私には音楽を辞めるという考えはなく、会社で働いている間もちょこちょこと音楽の制作を続けていた。そして2月、退社してからは知人づてで紹介してもらった仕事をリモートでこなしながら、十分な時間の中で制作を続けた。

だが、2年間の時を経ても霧はそこにかかったままだった。

3ヶ月、半年と時間が過ぎても作業は一向に進展を見せない。作品は作りたいのだが「何を作りたいか」「何を表現したいか」「何を伝えたいか」がぼやけてはっきりとしない。そんな霧の中で作っては止め、作っては止めの繰り返し。これまでの3年間と同じような日々が過ぎていく。やはり音楽家としての自分はもう枯れていて、もうこの道は諦めた方が良いのかも知れないとも考えた。しかし遂に2020年も終わろうという12月、突如視界が開け、進むべき道が見えてきた。

何曲か「これは」と思えるものが形になり始め、アルバムの全体像が見えてきた。現在の制作状況は楽観的に見て60%ほどだろうか。構想では10~12曲くらいになるのだが、形になっているのは7曲くらい。あと4〜5曲ほどを作り、内容を絞り、全ての作品を完成させる。

ここに、その制作日誌を書いていこうと思う。

もしかしたらまた延々と完成しないかもしれない。ここから先は山登りで言えばいよいよ酸素が薄くなってくる頃。ある程度貯めていたやりたいことや、アイデアの貯金はこれまでの曲で大体使ってしまったし、ここからの楽曲がアルバムとしての世界観を崩さず、むしろより強固なものになるように作り最終的なゴールに導けるようにしなくてはならない。さらに元来怠け者の性格の私、この日誌が苦悩や葛藤という格好の良いものより、そのだらけ具合、サボり具合、いまハマってるゲームやYouTubeを報告していく「ほんわか日常系ブログ」になってしまう可能性も多々ある。

だが、作品が世に出た後にその制作過程やそこに込められた思いを語ることは多々あるが、リアルタイムに作り手がその思考を一つ一つ書いて発表していくのは現代的で面白いのではないかと思うし、何より書き始めたら完成させなければいけなくなる。

音楽のジャンルは”エレクトロニック・ミュージック”。PCやシンセサイザーなどを使って作る音楽。その中でも”エレクトロニカ”、そして”エクスペリメンタル・ミュージック”。直訳すれば「実験音楽」と言われるこのジャンルはその唯一無二の感性を表現する音楽家が入り乱れる、まさになんでもありのジャンル。

私、HAIOKAという世界の片隅の音楽家が、何を考えて音楽を作っているのか、それを日々記していくことによって私自身の考えを改めて客観視して、その制作に活かすことができれば。そしてそれが誰かの楽しみになるのなら、それほど嬉しいことはない。自分の考えを日々文章にするのは良いとメンタリストのDaiGoも言ってたし。


そんなこんなで、ここに制作日誌を始めたいと思う。


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