ハイミドリ@蒼井 朝顔

嘘と本当と、誰かの話。

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最近の記事

爪切り

素足の形が好きだと 壊れ物のように持つ その手が好き アキレス腱と踵を支えて つま先を真正面から見る その目も好き 本を読みながら 足を遊ばせていたら 柔らかく持ち上げて 両手の中に収められた 少し撫でて「爪が伸びてるね」とポツリと言う 繊維にすぐ引っかかる 私の白い 柔らかい爪 「あとで切るよ」なんて無造作に答えたら 私のつま先を捕まえて 「切ってあげる」 ピンと張り詰めた 甘い時間 視線と神経が つま先に集められる パチン パチン ただそれだけなのに くすぐった

    • こういう時に、効かない薬

      1日の、飲める限度までもらった薬を飲んでも、気持ちが収まらない時がある。ここ2年位で、急に増えた。 最初は、意味のわからない女の言う事。 最近は、堪りかねたこと。 私は聖人ではないので、苦しかったり辛かったりすると、どうにも当たったり暴走したりしてしまうんです。…人間なら、誰しもあることだとは思います。ほとんどの人に言わない、センシティブな話題の一つくらい、私にもあるんです。理解してほしいとは言わないけど「荒れているなぁ」と、なだめて欲しくなるときが、たまにあります。

      • 士官候補生

        剣の意匠など、見てもわからなかった。 自分の手に馴染んで使えれば良い。 大伯父はそう教えてくれた。 私は大伯父の教えに従って、自分の扱いやすい長さと重さで…幾分見飽きない装飾の施された剣を手に取った。それが、大伯父からの入学祝だそうだ。 「没落しても騎士の家に生まれたことを誇りに思うように…」 結局女しか生まれなかったこの家に、大伯父は大層な教育と資材を父の代わりに注ぎ込んでくれたと思う。教会学校で社交的な妹とは対象的な私にとって、図書館の本を読むことや授業に取り組むこ

        • 習性

          私は、およそこの世のものではない恐怖の人物と対峙した…はずだった。 なぜ過去形なのか。 それは「乗り越えられたっぽい」からだと思う。 ほんとうの意味で指示待ちの人間は、犬よりも劣ると思ったから。 醜く足掻けばいいよ。それが楽しいなら。いや、本能か。 悪いけど、私は楽しいことをするよ。 犬より劣る・猫になれない・猿のような生き物さん。 君は、そこまで何かを得たとしても、何もできないんだね。 ちょっと同情しそうになったよ。 私を殺そうとしてもできなかったから、消耗戦に引き込

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        • 詩集
          36本
        • 物語
          7本
        • ポートフォリオ
          2本
        • 4本

        記事

          あいのありか

          存在するのに 誰も在処を知らない 例えばあなたの指先が触れる場所に 私への愛があるのなら ジクジクと腫れ上がるこの種の先が 今にも泣き出してしまいそうであっても 安心して委ねても良いのかしら 私の内側に咲く花に 熱くキスをしてくれるなら あなたを疑わずに愛の概念を構築させて 白昼夢を揺蕩う海月のままでいたい 熟れる果実を啄む人 どうか教えて あなたの「あいのありか」が喜ぶこと パズルの欠片のように私を愛するから とうとうあなた無しでは生きられなくなった この身も心も

          バーテンダーと詩

          たくさんある 言葉の中から ひとつ ひとつ 丁寧に 慎重に 大胆に 脳内で選ぶ様と 壁一面に並べられた酒瓶を選び取り シェーカーで混ぜ合わせる様は なんだか似てる 組み合わせては 組み立て直して 吟味しては 推敲して 眠らせて 清書はグラスに注ぐこと 丁寧を心がけて書かれた文字は飾りつけ あなたに読まれるために 今の最高を綴る 私からの一杯です 感じることは 怖くないよ 旨みも 苦味も いつか訪れるだろう その時に 懐かしんでもらえるのなら 私は その一口に なり

          企画2

          マヒロと雪内容 日常を過ごすちょっとファンタジーなゲーム。 媒体 スマートフォン(買い切り) 概要 (…夏休みがあるなら、冬休みがあってもいいじゃないか) 今年は、お母さんが住んだ家に初めて行く。 妹が生まれるから、春まで転校するんだって。ヘンなの。 「お年玉、もらおうね」なんてお母さんは言うけど… 雪…ってゆーか、寒いの嫌い。 だけど、なんだかソワソワする。 だって…寒い場所なのに、話す人はみんな楽しそう。 「たいへんだぞぉ~」ってスマホの向こうのお父さんは笑

          企画1

          カミサマ代理内容 優しい気持ちを繋いでいくゲーム。 媒体 スマートフォン・PCブラウザ 概要 仕事中の事故で大怪我をした『私』の元に突然カミサマが現れて 「しばらく留守にするんで、ちょっと人々を幸せにしてくれないか?」 と言ってきた!?…事故が元で仕事を手放してしまった『私』は表向きニートをしつつ、カミサマからもらったちょっとした能力と天使のサポートを使って密やかに人助けを始めることにしたんだけど……。 システム 天使ゲージと悪魔ゲージがあり、その中間位置から始

          誕生日の夜

          完全に終わった。もう、無理。 私の物語はもうすでにここで途切れた。あとはもう知らない。勝手にしたらいい。だいたいね「これからだ!!」と意気込んだところで、また誰かに踏みにじられて笑いものにされるがオチ。こうやって入力しているうちに、携帯を半分に割りたい気分になる。…そんなことをしてもお金が無駄になるだけだからやらないけど。奇声を発してメチャクチャに破壊して事切れてしまいたい。 私はどうして、こんなに…苛立っているんだろう。 彼と大事な日に会えないから?……それ以外にないけ

          あした

          あなたが昨日あいしてくれたから 今日わたしはここにいる あなたが昨日あいしてくれてなかったら 明日のわたしはいなかった あなたが昨日あいしてくれたから ホントはもっと必要なんだけど あんまり欲張らないようにしているよ あなたが昨日あいしてくれてなかったら ホントに必要じゃなかったんだと マッチを売っていたかもしれないね 明日わたしをあいさなくても 昨日わたしをあいしてくれた 今は それでいい

          欲しい人

          あれが欲しい これが欲しい 何も要らない 何が欲しい? 私は何かが欲しかったような気がする でも何が欲しかったのか思い出せない 私自身を 一生失えば、何か解るのかも知れないね

          束縛と憐れみ

          憐れみで生き、緊張で縛ることを「愛」だと思っている人 きっと君は気づかない 自分の幼稚さに 誰かの思いやりに

          雨雲と嗅覚

          向こう側の気持ちを見せてよ 私にはわからない合言葉の向こう 初夏の雨粒が少しだけ甘いのは 私達の歩いた時間が熟成されたから 孤独が歌う果てのない到着点 誰かが幸せになったあとの席は まだ少しだけあたたかい

          静けさの感覚

          凪いだ風に包まれる水面 日向で眠る小さい生き物 それらを見つめているような 心のあり方 眠気を纏うような 一切の不安から解放されるような 柔らかい環境 全て繋がっている この静けさの感覚は 内なる自身へと向けられている

          ドロテアの横顔

           真っ白な雪原に、一つ、また一つ。真っ赤な雫が落ちた。 かつて『猟犬』と呼ばれた私にも、最期の瞬間が近づこうとしているのかもしれない。指先も爪先も、極寒の風が吹き荒ぶ中では、冷凍された肉の腸詰めのようで、触れた感覚はとうに存在しない。そこから滴り落ちる血液だけが生きていると自覚させ、同時に体温を奪っていく。しかし、私は生き延びなくてはならない。何としてでも。猟犬ではなく、人間に戻って、この生涯を終えたいのだ。幼い頃に両親を亡くした弟と妹のために。その為に、どれだけの人間を殺し

          通り雨

          煙る湿気を川と共に流れながら 寝静まっている歓楽街を歩けば 静けさの中から目覚めだす太陽の時間 枝垂れ柳が風の方向を示す トンボ達が我が家を案内したがる 昔の杵柄か 私も歩けば酒場に当たる 名ばかりのバーテンだけど 店を眺めるのが楽しくて 喫茶店を探しながら 行き着く先は洒落た酒場で 我ながら師匠譲りの鼻の効き方に ニヤケた口元を慌ててマスクで隠す 足を踏み入れたのは私の方 この酒が最初の一杯 あの酒が最後の一杯 気がついたらそんな場所にいた 通り雨は 故郷で私を冷