ハイミドリ@蒼井 朝顔

嘘と本当と、誰かの話。

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光を背負う人

真っ赤な指先 白い吐息 目深に覆う頭巾 水滴だらけの眼鏡の奥 燃え残りの炭のように 瞼を閉じかけて その火が消えないように 縋るように期待をして そこに居ました 顔を顰める程 踵と土踏まずが痛み すれ違い様に 人と接触してしまったら 冷たい泥と同化してしまいそうな 消耗しかけた気力 輝かしい最終段階を 予告する音楽は 一人一人姿を現し あなたは私の正面に立ち たくさんの観衆越しに 向かい合った 照明の煌びやかさを諸共せず まるで射る様な気迫に 私の目は開かれる 瞬きを

    • 書いても書いても、公開できない文章が増えていく。苦しい。

      • 迷路

        夢に見た景色 何度も同じ道を歩いている 廃墟のベッドには飲みかけの薬と水 そこにたどり着くと ひどく安堵して強い眠気を感じる 瞼を閉じて意識を手放すと 再びはじまりの道に戻る 石畳を歩く 靴の音が響く 色素の薄い唇が笑みを形づくる 艶消しの表紙がロウソクに照らされている 漂白されていない音が私の背筋を冷やす 駆り立てられるように歩みを進めざるを得ない 花籠は朽ちた 私は口を閉ざす この迷路から出なくてはならないのだから まるで楽園のような悪夢から

        • 夕餉

          怠惰に流されて 掃き溜めにたまる そんな日常を 壊したくて 米を炊いた なんで こんな手順を 疎んでいたのだろう 2分としないうちに 一つ一つの 行程が終わっていく 疎ましいのは 世間の事情ではなく 私の芯のなさ 眠れないことと 起きれないこと もう少しだけ 時間がほしい 無意味な要望だけど 抗えないものに 意識を向けて 無為を味わう余裕なんて 無いはずなのに 遠くで 風がうねる音を 聴いた

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          39本
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          2本
        • 4本

        記事

          はなればなれの君へ

          2650g 軽くなった日は あまりに苦しくて あまりに眠たかった 肌も弱くなり 太りやすくもなった 小さいのに しっかり重くて あたたかかった ずっと抱いて眠りたかった そんなことしたら 死んでしまうけど 他の誰も 触れさせたくないくらい 大切だったのに さようなら 我が子 最後の子供でいられる一年だよ 何をとは言わないけど 精一杯 生きていってね ありがとう 我が子 私をお母さんにしてくれて あなたは私を覚えていないけど 私はずっと覚えているよ 小さな手 小さな足

          はなればなれの君へ

          アイコニック・ビジョン

          霧が晴れたら ゆっくり眠りたい 重い頭に 扇風機のノイズが響いている きっと もう  地面を見た 土埃と海辺特有の匂いが混ざっている ひとつひとつのことに いちいち考え込んでいる 小さな鳥が飛ぼうとしてる 体よりも大きな枝を咥えて飛ぶつもりなのだろう 霧が晴れたら ゆっくり歩きたい 冴えていく感覚に ぬるい水を飲み干す

          アイコニック・ビジョン

          幸せな嘘

          私もあなたも若いんだから、できるに決まってるでしょ! 責任取るの? それを聞いても、あなたは答えなかった。 うやむやにして、私を押し倒したね。 結局、私は 誰からも守れなかった。 誰からも守ってもらえなかった。

          この心が叫ぶから

          ふと思い出した歌詞の一節に 無性に泣きたくなったところ きゅっと唇を甘噛して耐えていた 風に乗るように唄う人と感じていたら 私の背中に追い風を当ててくれたような気持ちになって 涙が溢れてしまった 学生たちが ソロソロと連なって下校している 加熱式タバコの副流煙を なんとなく肺に溜めるひととき 男女問わず 私より背の高い子どもばかり 「煙がかからないように」 気を遣ったつもりで無意味な仕草 顎を上げて煙を雲へ送った 私のウヤムヤも飛んでいけ 果てのない空の海を 切り裂

          いらないよ。そういうの。

          お客様の言うご注文を聞けるのは、お金をいただけるからであって 貴様のエゴに無償で振り回されたいなんて、思わないんだよ。 惚れてる男なら、話は別だけれどね?

          ¥1,000

          いらないよ。そういうの。

          ¥1,000

          屋根の上の秘密

          年上の人が好きになったのは、十になる頃。 いつでもどこかで、ふらっと友だちを作っては連れて来る父は 成人しているかしていないかくらいの青年と仲良くなったらしい。 その青年は働き者で、よく日に焼けた腕や顔に笑顔が眩しい。 病気がちでよく部屋でゲームをしている私を気にかけてくれていた。 庭でテントを張っておしゃべりしたり、雑草取りから屋根の上にあるアンテナの調整など父に頼まれたりしていたのだろうか、窓の向こう側には何かしら作業をしている青年。目が合うと、笑顔で手を振り返してくれ

          寂しいとき、誰かと居たいのに、私は一人になる。本当はそこに、声を聞く人がいて欲しい。あなたに居て欲しい。でも新鮮な肉探しに忙しいみたい。何も伝えない。伝えられない。

          寂しいとき、誰かと居たいのに、私は一人になる。本当はそこに、声を聞く人がいて欲しい。あなたに居て欲しい。でも新鮮な肉探しに忙しいみたい。何も伝えない。伝えられない。

          泣いたら、雨が止んだ。 きっとずっと 私は泣きたかったんだ。

          泣いたら、雨が止んだ。 きっとずっと 私は泣きたかったんだ。

          切なさは夜に溶ける

          思うように体を動かすことができない 呼吸すら危うい意識の中 薄くかかるモヤの向こう 何かの気配がした 夢にうなされるなんて ずいぶんなかった 明くる夜 私はモヤの気配に話しかけた 君は誰? うごめきは ただ微笑んでいた そして私を眠りに引きずりこむ だんだんとモヤが君を形作っていく 手を伸ばしたところで 触れる事はもう出来ないけど あぁ また私は誰かを重ねてる

          切なさは夜に溶ける

          爪切り

          素足の形が好きだと 壊れ物のように持つ その手が好き アキレス腱と踵を支えて つま先を真正面から見る その目も好き 本を読みながら 足を遊ばせていたら 柔らかく持ち上げて 両手の中に収められた 少し撫でて「爪が伸びてるね」とポツリと言う 繊維にすぐ引っかかる 私の白い 柔らかい爪 「あとで切るよ」なんて無造作に答えたら 私のつま先を捕まえて 「切ってあげる」 ピンと張り詰めた 甘い時間 視線と神経が つま先に集められる パチン パチン ただそれだけなのに くすぐった

          こういう時に、効かない薬

          1日の、飲める限度までもらった薬を飲んでも、気持ちが収まらない時がある。ここ2年位で、急に増えた。 最初は、意味のわからない女の言う事。 最近は、堪りかねたこと。 私は聖人ではないので、苦しかったり辛かったりすると、どうにも当たったり暴走したりしてしまうんです。…人間なら、誰しもあることだとは思います。ほとんどの人に言わない、センシティブな話題の一つくらい、私にもあるんです。理解してほしいとは言わないけど「荒れているなぁ」と、なだめて欲しくなるときが、たまにあります。

          こういう時に、効かない薬

          士官候補生

          剣の意匠など、見てもわからなかった。 自分の手に馴染んで使えれば良い。 大伯父はそう教えてくれた。 私は大伯父の教えに従って、自分の扱いやすい長さと重さで…幾分見飽きない装飾の施された剣を手に取った。それが、大伯父からの入学祝だそうだ。 「没落しても騎士の家に生まれたことを誇りに思うように…」 結局女しか生まれなかったこの家に、大伯父は大層な教育と資材を父の代わりに注ぎ込んでくれたと思う。教会学校で社交的な妹とは対象的な私にとって、図書館の本を読むことや授業に取り組むこ