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詩集

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記事一覧

切なさは夜に溶ける

思うように体を動かすことができない 呼吸すら危うい意識の中 薄くかかるモヤの向こう 何かの…

爪切り

素足の形が好きだと 壊れ物のように持つ その手が好き アキレス腱と踵を支えて つま先を真正…

あいのありか

存在するのに 誰も在処を知らない 例えばあなたの指先が触れる場所に 私への愛があるのなら …

バーテンダーと詩

たくさんある 言葉の中から ひとつ ひとつ 丁寧に 慎重に 大胆に 脳内で選ぶ様と 壁一面に並…

欲しい人

あれが欲しい これが欲しい 何も要らない 何が欲しい? 私は何かが欲しかったような気がす…

束縛と憐れみ

憐れみで生き、緊張で縛ることを「愛」だと思っている人 きっと君は気づかない 自分の幼稚さ…

雨雲と嗅覚

向こう側の気持ちを見せてよ 私にはわからない合言葉の向こう 初夏の雨粒が少しだけ甘いのは 私達の歩いた時間が熟成されたから 孤独が歌う果てのない到着点 誰かが幸せになったあとの席は まだ少しだけあたたかい

静けさの感覚

凪いだ風に包まれる水面 日向で眠る小さい生き物 それらを見つめているような 心のあり方 眠…

通り雨

煙る湿気を川と共に流れながら 寝静まっている歓楽街を歩けば 静けさの中から目覚めだす太陽の…

無題

明け方 星もない夜空から群青の波が引く 全てをさらけ出すには まだ早い 真白の鱗の隙間から…

木材流送

まつ毛にかかる虹の粒 何度も忘れた人の言葉が重なる 視界の悪さに何度拭おうとしていたか 懐…

声なきは語る

声なきは語る そこに自己を 声なきは語る そこに存在を 声なきは語る そこに歓喜を 踊る輪…

傷口を縫う思考の糸

純粋な言葉とは、一体何なのだろう。 子どもが発した言葉なのか 口にする前の思考なのか 分か…

光る闇

 眼差しを畏れるようになったのは、いつからだろう。スケールをかざしては静かに佇むあなたを真白のキャンバスに素描するのは、思春期の自慰のような背徳と虚無だから禁忌にしていたというのに。  愛という自覚。幼気の羽化。崩壊の手触り。  だのにまだ繋がれて、吐き出した涙を拭うのは唄う声。私を捉える二つの光る闇、どうかお願い食い殺さないで。与えられた命は生きて尽くすから。 どうか。