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〈俳句日誌〉季節の移ろいと残る夏の虫

秋冷えぬ道辺にねたる夏の虫 苑慈

2021/9/20 夏を思わせる日差しの中、駅までのいつもの道を歩いていると蜂がところどころに横たわっていました。夏の時期には盛んに飛んでいた虫が今や力尽きて道端に身を転げる姿となっていることに季節の移り変わりといのちの儚さ・憐れさ、哀しさを覚えました。

 はっとさせられた出来事でした。夏の間、私をはじめ人間などから幾度も怖がられ煙たがられていただろうに、いつの間にか無力な様子に変わってしまっていました。疎んでばかりいてごめんねと、蜂に対して敵愾心ばかりを抱いていた自分を省みました。蜂だって一生懸命生きていただけなのに。あの世があるのならせめてそこでは、静かに眠り安らいでくださいと思った昼中でした。

【言葉選びで迷った点①】
〈”ろばた”〉「道辺」のところは、”ろばた”という音を持ってきたいなと最初は思っていました。けれども”ろばた”という音に当てはまる単語は「炉端」で、囲炉裏や暖炉のそばを表すのですね。「路端」という語が”ろばた”と読めるのではないかと期待もしていましたが、こちらは”ろたん”と読む交通法規関連の語のようでした。調べていくうちに道を表す言葉を他にもいろいろと知れて、音の響きを味わいながら吟味していくのがとても楽しかったです!普段縁のなかった言葉についてたくさん勉強することができて、俳句の楽しさにどんどん魅了されていきました。

【言葉選びで迷った点②】
〈「秋冷え」に続く付属語〉単純に「て」と助詞を置くだけにして後に続けるか、「ぬ」と完了の助動詞の終止形を置いて一旦区切ってしまうか迷いました。最初は前者の方にしていましたが、やはり後者のように潔く切ってしまった方が俳句らしいような気がしてこちらを採用しました。余情も「秋冷えぬ」の方が残る気がします。

【言葉選びで迷った点③】
〈「ねむる」か「ねたる」か。〉音の響きは現代語動詞「ねむる」の方がなんだか柔らかくて好きです。しかし現古の文法が入り混じると紛らわしく読みにくくなるかと思い「ねたる」を採用しました(完全に古語だけでつくれる力量は全然ないので…語句は現古ゆるやかに選択していきたいと思っています)。今回は特に「秋冷えぬ」が現代語と古語とでは意味が全く違ってきてしまうので、上句が完了・強意を表すため則った古語の方に統一しました。

【次回予告】(投稿が作句に全然追いついておらず当分の間は前触れも書けそうです)
 この虫が翌日には蟻たちに食べられていました。その様子が、ちょうどタイムリーに痛感していた人間関係の難しさに重ね合わされてなりませんでした。インターネット上なのでその実際の出来事の詳細は言いませんが、普段から思っている人間関係一般のことについても少しおしゃべりしてみたいなと思っています。次の投稿もお時間ある際にお読みいただけると嬉しいです。

 今回も最後までお読みいただきありがとうございました!良い秋の夜をお過ごしください。

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