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視聴者投稿創作怪談『湖畔のコテージ』

これは、私の怪談を扱う配信に、視聴者の方より投稿されたお話です。




イギリスに旅行に来た私は、夜を自然に囲まれて過ごしたいと思い、湖のほとりにあるコテージで一泊することにしました。

そのコテージは部屋数は少ないもののそれぞれの部屋が広く作られており、一人で泊まるにはすこし勿体ないくらいに豪華でした。
部屋には本棚もあり、英語を理解できれば一週間はこもれる程の小説が置いてありました。

暖炉に当たりながら本を読むという、憧れの時間を過ごしたその日の夜。
声とも音ともつかない響きに目を覚ますと、部屋の床付近、恐らく本棚の裏から赤黒い靄が入り込んでいました。
触れるとどうなるか分からないので最初はベッドから離れずにいたのですが、しばらくして触れてもなんともないことが分かりました。

それでも色が色なので早く靄を逃がそうとドアを押したのですが、何故か開かない。部屋は鍵がついていないはずなのに、開かない。
窓もベッドの上についているのみで、靄を逃せない。どうしようどうしようと悩んでいるうちに、靄は私の胸元まで来ていました。

なんとか出られないかとドアと格闘していたとき。

突然、部屋にゾンビが出現したのです。

唯一の出入り口のドアは開かず、窓にも外に格子がついているため人間大のものが入ってこれるはずがない。それなのに、部屋にゾンビが出てきたのです。終わった――、と思った瞬間、私は思い出しました。

「このドア内開きだった」と。

慌ててドアを引くと喉まで来ていた靄は一気に流れ出し、靄が消えた頃にはゾンビもいなくなっていました。

怖くなった私はその日一睡もできず、その後のイギリスでの予定をすべて取りやめて日本に帰りました。
飛行機に乗ったときにはすっかり安心していたのでしょう、12時間のフライト中ずっと寝ていたそうです。



ペンネーム:ノボル
2021/9/18配信 https://youtu.be/I06Y5lxkBnA
怖いお話募集フォーム https://forms.gle/ybMkLAd37RsCguKr8
※ご投稿内容に改行や誤字脱字修正等の加筆をしていることがあります。

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