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視聴者投稿創作怪談『紫陽花の声』

これは、私の怪談を扱う配信に、視聴者の方より投稿されたお話です。




とある山奥に佇む、青い紫陽花のキレイな神社。
ここでは、時折、紫陽花の中から子供の声が聞こえるそうです。神主によると、元々神社の紫陽花は薄い赤だったと言います。色が変わりはじめたのは14年前とのこと。

そう言うと、ぽつりぽつりと、こちらが聞くでもなく神主は昔話をはじめました。

16年前のある日のこと。
「双子が生まれたから名前を付けて欲しい」と、夫婦が神社に駆け込んできました。曰く、兄の1人分しか名前を決めていないから弟の名前を考えて欲しいとのこと。兄は「天誠」。
ならばと、神主は弟に「竜誠」と名付けました。夫婦は満足し、双子を連れて神社を後にしました。

それから2年ほど経ったある日。神主が寝ようとすると、どこからか子供の声がするのです。こんな時間に誰だ、と思った神主は、声のする方へふらふらと向かいました。
するとどうでしょう。昨日まで赤かった紫陽花が、1箇所だけ青く変色しているではありませんか。不思議なこともあるもんだ、と思った矢先。神主に、また子供の声が聞こえてきました。

「パパ…おい………ないで…」

その声に聞き覚えがあった神主は、次の日双子の家族のもとを訪ねました。竜誠がいませんでした。
夫婦の話を聞くと、名前を付けて貰った日に亡くなったとのこと。しかし天誠は、一昨日一緒に遊んだと言います。

気がつくと、昔話をしていた神主は眠っていました。

紫陽花の花は土の酸性度で色が変わるそうです。酸性だと青色、中性〜アルカリ性だと赤色になる、とのこと。

げに恐ろしきは人の業、といったところでしょうか。
私は紫陽花の花壇のそばに建てられた小さな墓に線香をあげ、神社を後にしました。
眠る子供を抱えるような、懐かしい重みを背中に感じながら。



ペンネーム:ノボル
2021/9/11配信 https://youtu.be/gsUWYO0fk4Y
怖いお話募集フォーム https://forms.gle/ybMkLAd37RsCguKr8
※ご投稿内容に改行や誤字脱字修正等の加筆をしていることがあります。

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