私を心底うんざりさせるのは、亡骸のグロテスクな形ではなく、途方もない純粋なのだ。

 強迫的な夕暮れ。腐った様な布団から起き上がり、真っ赤に染め上がった部屋の真ん中で、ポカリスエットを飲む。転がるウイスキーの瓶をポカリスエットと混ぜる。強迫的な夕暮れ。真っ赤に染め上がったベランダにトイレの花子さんは泣きながら立っている。泣きながら手を振っている。64のコントローラーに躓いて転ぶ。チャイム。帰り道。またウイスキーを口に流し込む。アルコールで胸が焼ける。それを繰り返す。胸が壊れてしまうまで。

 包丁を持った男の人に追いかけられる路地裏も、大きなマスクをした女に出会う大通りから外れた道も、全ては過去になり、今日に至ってはその残滓さえ発見する事が出来ない。公衆電話は呪われた遺物になった。

 蟷螂にヨダレを垂らし続ける不審者。その重みに耐えられない様に笑みを浮かべる。集会所。すえた臭い。痙攣する赤ん坊を触った手で作る料理。

 カートの娘フランシスが奇妙なダンスを魅せてくれるMVが印象的なNirvana 「Sliver」は約2分10秒の中で「Grandma take me home おばあちゃん、僕を家に返して」という一節が43回も出てくる。

 BENXNIは不眠症のトムとジェリーをサムネにしてyoutubeにアップしている「I'mSickOfWakingUpEveryMorning(毎朝起きるのにはもう飽きた)」という曲の中で「君だけじゃどうにもできない」と「Give me love and trust(私に愛と信頼を下さい)」で韻を踏んでいる。

 レディオヘッド「パラノイア・アンドロイド」の中に「What's that?
I may be paranoid, but, no android(なあ、これはなんだ?僕は偏執症かもしれないけど、アンドロイドじゃない)」という一節がある。

 今日の雨は最悪だった。部屋の中にいる筈なのに、まるで大きな水槽の中で閉じ込められているかのような妄想に陥り、余りの息苦しさに思わず3回も吐いた。

 今日の雨は最悪だった。打ち付ける雨音は最低の部類のノイズで、風の音は醜さの塊の様だった。薄く青ざめた部屋で途方に暮れるしかなかった。

 架空の初夏。君の水着。眩しい渡り廊下。閉じた手のひら。あぜ道。踏んだ感触でそれが人の身体だと分かる。でも下を見れない。下を見れない。

 今日の雨は。そう、今日の雨は最悪だった。思い付く限り最も最悪で、下品な奴だけの声が聴こえる、ろくでもないレコードの様だった。

 自撮りに添えた文章は「でも死にたい夜もあります」それでも君が来てくれたらまじで嬉しい。

 それでも穏やかな夢をみる。みたいに祈っています。それから梅雨。はやく終わって。

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