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予防接種の大変さと母の偉大さ

この間、普段は仕事の平日に休みが取れたので、娘の予防接種について行った。大きな病院で予約もしていたものだから、早く帰れるだろうと考えていたら入り口に長蛇の列で片膝をつきそうになった。

理由は明確で、インフルエンザの予防接種を今年は世界で流行しているウィルスの影響で早めにする人が増えているためだという。受付の方が申し訳なさそうに教えてくれたが、コチラとしても一人一人に頭を下げられている姿に恐縮してしまう。

やっとの思いで受付をし、小児科の階にエレベーターに乗り、エレベーターの扉が開いた瞬間、今度は両手、両膝を地面につきそうになった。先ほどよりも、人が多いかつ子どもの泣き声がこだましているのだ。

「これはかなり待ちそうだね、娘も機嫌が悪くなりそうだよ」

そんなことを妻に伝えると、まったく動じることもなく小児科の受付に書類を出しに行った。

「確かに、いつもより人は多いけど、まぁこんなもんでしょ」

苛立ちもなく、娘を抱いて椅子に座り、眠たげで不機嫌そうな娘をあやしている。僕も椅子に腰を下ろし、あたりを見渡すと、泣いている赤ちゃんを抱き上げているお母さんや3人のお子さんの相手をするお母さん、抱っこひもにおんぶとサンドイッチ状態のお母さんと、母親の戦場を見ているような気がしてならなかった。

「次回の予防接種はあなた一人で来てみる?」

「ココは僕には荷が重そうだ、2人でこよう」

妻のしたり顔に何か言いたくなったが、一人で連れてくるのもつらいものがあると一考して沈黙を貫いた。看護師さんも騒然としている状況と、フルフェイスのシールドをつけているせいか声を大きく張り上げないと届かないのか大きな声で次の人の名前を呼んでいる。

予防接種が終わって泣きわめいている子どもを慰めつつ、安全のため30分間病院に滞在しないといけない状態はかなり疲れるのか、お母さん達の顔に疲労の色が見え隠れするのがわかる。各々の父親たちは何も知らないで、余計な一言で地雷を踏んでしまったという経験者は多いのではないか。

ココは戦場なのだと改めて実感して、そこに立っているお母さん方の偉大さも同時に理解してしまう。この場にいる母親が父親に全員変わることがあれば、状況はもっとひっ迫するものに様変わりすると思うと、隣にいる妻への感謝の気持ちも出てくる。天狗になりそうなので、言葉にはしないけどね。

予防接種も泣くこともなく娘が妻に抱かれて帰ってきた。30分の待機の間、次回の息子のインフルエンザの予防接種のことを考えていた。次は仕事で一緒にはこれないので、その日は疲れている妻のことを考えて惣菜でも買って帰ろうとひそかに計画を立てるのだった。



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