俳句「わすれているのかも・・・」
母は死もわすれたるごと生身魂
昨日、母のシーツをベッドに掛けるときにふと思い出した。このシーツは姉が父と母にと買ってきたもので、母のシーツにはカメの、父のシーツにはクジラの模様が描かれている。
父が生きていた頃、父の布団に掛けられたそのシーツを見て、突然母が悲鳴をあげたことがあった。「あれや私に、お前や邪魔やさけ死ねて言う!」いわゆる認知症の譫妄だと思われるが、その少し前に、「かんかん坊主、かん坊主、お前がいたら邪魔になる」という歌があったと話していたので、その「邪魔になる」というフレーズが母のこころに作用したのかも知れない。
いま、母は「死ぬ」ということばをほとんど発しなくなった。わすれてしまったのだろうか? だとしたら死ぬまでわすれていてくれ……。
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