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俳句「訪問理容」

髪切りて笑みこぼれたり初夏の母

 鏡で見た顔を自分の顔だと認識したのは久しぶりなのだろう。洗面所にも鏡はあるが、朝晩の歯磨きのときに鏡に映る顔を、母がどれくらい自分の顔と認識しているかは定かではない。だが、この日、訪問理容で髪を切ってもらって、「ほら、お母さん、きれいになったで」と姉が母の顔の前に鏡を差し出したときの笑顔は、明らかにそこに自分の顔が写っていると分かっている笑顔だった。実際、髪を切って、産毛を剃ってもらうと、表情が見違えるほど明るくなる。
 ちなみに以前の母は、白髪を嫌がって美容院で毛染めをしてもらっていたが、私は黒く染めていない今のグレーの髪の毛のほうが顔がやわらかく見えて好きだ。

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