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俳句「花盗人」

われに無き花盗人になる覚悟

 母が外出するのは、病院の検査のときだけとなった。車椅子から車への移乗が難しくなって、姉も私もなかなか母を外出させる気持ちになれない。病院の検査のときは、車椅子ごと運んでくれる介護タクシーを利用する。車への移乗は不可能ではないが、無理をして母を怪我させるのも怖いし、私自身も腰を痛めでもすれば、介護に差し障りが出る。

 それでも春になると母に桜を見せてやりたくなる。いっそどこかの桜の枝を折り取ってこようかと思ったこともある。もちろん桜ともなると、その辺の草花をちょっと摘んでくるのとは訳が違う。倫理的に許されることではないが、母のためにそれくらいの覚悟をもつ子どもではありたい。

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