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俳句「煤払」

平然と老母居座る煤払

 元来母はそういう人だ。年末母があわただしく掃除をしている姿を見た記憶がない。だいたい母は、年末だから大掃除をするとか、お盆だからお墓参りにいくとか、そういう観念のない人なのだ。
 私が大学を卒業する年の二月、下宿を引き払うために荷物の整理も必要だろうと、父が母を私の下宿に手伝いによこした。だが、母は私の荷造りを手伝うどころか、こんな狭い部屋に二人で寝るのは窮屈だと言って、私を旅行に誘った。結局、母は私と二泊三日の旅行をして、また故郷に帰ってしまった。
 仮にいま母が自分の足で動けるとしても、煤逃などは考えもしまい。いたい場所にいたいだけ居座るに違いない。

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