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俳句「睡る母」

行く春を惜しみもせずに母は睡る

 まあ、季節をわすれた人だから、惜しむもなにもないが……。それにしてもよく眠るものだ。あまりに静かなので、心配になって何度か様子を見に行ったが、なかなか安らかな顔をしている。
 黒田杏子に「花三分睡りていのち継ぐ母に」清水哲男の『増殖する俳句歳時記』の解説によると、この句の母は病臥していて、作者には母がひたすら「いのち継ぐ」ためにのみ睡っているように写っているとこのこと。わが母は、病臥しているわけではないが、いのちを継ぐために睡るという表現は、腹式呼吸のときの息のように胸深くまで入ってくる。
 で、この句へのリスペクトを込めて、拙句にも「睡」という字をあてた。

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