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A Place to Hang the Moon 与え合い救い合う優しさが導く最高の場所


Kate Albus著、刊行日:2021年2月15日、ジャンル:児童書/歴史フィクション、ページ数:320、対象年齢:小学校中学年から

あらすじ
 1940年、ロンドン。ウィリアム、エドマンド、アナの3人は12歳、11歳、9歳の兄弟姉妹。幼くして両親を亡くした3人を(書面上は)保護者として預かっていた祖母が子供達の今後についてなんの手配も残さず亡くなり、3人は財産がありながら大人になるまで一銭も自分たちでは使えない状態で取り残される。
 ウィリアムたち3人は、祖母の弁護士のあまり現実的ではない提案により、第二次世界大戦の爆撃を避けて田舎へ向かう疎開児童の中に参加し、保護者となってくれそうな大人を探すことになった。
 しかし、疎開児童は不衛生で病気をもっているなどという悪意のある偏見があり、疎開先の地元の人々との隔たりは大きかった。疎開先の受け入れ家庭では最初から双子の男児たちと我慢のきかない質のエドマンドが衝突してトラブルとなり、受け入れ先を転々としなければならなくなる。
 そんな3人の心の拠り所となったのが、町の図書館と司書のミュラー夫人だった。ウィリアム、エドマンド、アナはミュラー夫人の親身な態度に心を癒され、交流を重ねていく。やがて3人の子供たちと司書のミュラー夫人は優しさを与えあい、互いに救い合う絆を結んでいく……。

感想
  何と言っても図書館が重要な舞台というのが大きな魅力で、司書との交流や読書の時間でこころを一時つらいことから逸らす時間など、本を読むことが好きなひとにとって魅力的な要素がたくさん詰まっています。そして、ドイツによる空襲が始まる中、本を通した交流で初めて親切にされ、大人に頼る子供であることを許されたウィリアム、エドマンド、アナが、優しく遠慮がちなミュラー夫人に親切で返そうとします。やがてお互いに「親切にしてあげようとしてするのではなく、ただ、そうしたいからする」という、他人行儀な間柄を越えた家族のようなつながりを持つにいたる優しさの物語です。読む側も暖かい気持ちで読後の気分までたっぷり楽しめます。
 さて、たくさんの理不尽やつらい思いを経た3人の子供達が、やっと安らぎを得た時にほおばる「素敵なものがいっぱいの朝ごはん」が登場するのですが、それを先日再現してみたのが冒頭の写真です。ソーセージが「脂でキラキラして端まで茶色く焼けている」のがポイントの一つですよ。

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