Pages & Co.: Tilly and the Bookwanderers 本を愛する人々だけの特別な世界

 アナ・ジェイムズ著、2018年9月18日刊行、ページ数:400、ジャンル:児童書/ファンタジー

 あらすじ
 ティリー(マティルダの愛称)は11歳の女の子。父親は生まれる前に亡くなり、母はまだティリーが小さい時に姿を消し、本屋Pages & Co.を営む祖父母と共に暮らしている。学校での友達付き合いも上手く行っていないティリーにとって、本屋Pagesが世界のすべてだ。ティリーと同じように本を愛する祖父母、菓子職人になる修行のために本屋併設カフェで新作お菓子の開発に余念がない青年ジャック、Pagesのすぐそばにあるカフェを経営しているメアリーとその息子でティリーと同じ学校に通うオスカー‥‥‥。
 そんな人々に囲まれた生活にある日変化が訪れる。いつものように本屋で過ごしていたティリーは祖母が見知らぬ若い女性と楽しそうに雑談しているのを見かける。女性は時代ドラマから出てきたような出で立ちで、「あの人ったら『彼女は一緒に踊って欲しくなるほどの魅力がない』なんて言うんだから!」とまるでジェーン・オースティンの『高慢と偏見』のワンシーンのようなことを祖母に話しているのだ。
 そしてティリーは、鹿打ち帽を被った優雅で身なりの良い男性が、パイプたばこをふかしながら(本屋なのに!)祖父と一緒に語らっているところにも出くわす。しかし、祖父に話しかけてからその男性の方を見やると、そこに男性の姿はもうなかった。祖父も祖母も、そして失踪した母も、本を心から愛する人に備わる特別な能力、本の中を現実の世界のように冒険できる力をもっていたのだ。
 ほどなくしてティリーも祖父母たちのように本の中の登場人物たちに出会い始める。Pagesに学校の読書課題のために訪れたオスカーと友達になり、オスカーを相棒にティリーの本の冒険が始まるが、そこにはいつも怪しげな人物が姿を見せることに気が付く。かつてティリーの祖父母たちもメンバーだった「地下大英図書館」の職員であるその人物がティリーを付け狙う目的とは‥‥‥!?

感想
ゆっくりお茶とお菓子を楽しみながらずっとソファで本を読んでいられるような独立系書店、本のキャラクターと出会える冒険、対人関係は苦手だけど本さえあれば幸せな主人公、そして地下大英図書館!?何ですか、その私の好きなものてんこ盛り!というファンタジーの児童書です。英語での対象年齢は9歳以上ですが、こういう本屋が舞台、本好き主人公という設定が好みなら子供も大人も没入しちゃう本かと思います。ハードバック版もペーパーバック版も同じように本の世界へ落ちていくシーンなどに挿絵と文字の工夫がされていて、その可愛らしさにもキュンとすること請け合いです。

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