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#015 母暮ALS 母と娘の会話

想像してほしい、手が使えないということは、日常のあらゆることができなくなる。特に女性は髪、顔、身繕い、すべてが人頼りになることがどんなに苦痛なことか。

母は髪型をとても気にする。週に1回は私が白髪を染めてあげている。洗髪のあとは必ずカーラーで巻く。お風呂あがりには全身にオイルを塗るし、かかとはクリームを塗ってから靴下を履いて保湿する。何分もかけて歯を磨いたあとは歯間ブラシを2種類使ってきれいにケアをする。眉毛が消えていないか、コンシーラーはちゃんとついているか。社会的な人間でいる基本的なベースの身支度が自分でだんだんとできなくなる。こうありたいと思う自分を自分でプロデュースして生活することができなくなる。

どんなに不安でかなしいことか。
私はできるだけ母が母らしさを維持できるようにしてあげたいと思う。

しかし、この病気は遺伝性である。私が母のようになったときに、私のことは誰も私のレベルでは私の看護はしてくれないだろう。私には私のような娘がいない。

母が、この先病気が進めば生きている意味がわからなくなる、毎日しんどいし辛いと言い、安楽死のニュースばかり調べたり、諦める言葉を発したりするときがある。

私は「でもお母さんには私がいるよね、私がこの病気になったときに一番側にいてほしい、一番この病気を理解してくれるお母さんはもうこの世にいないんだよね」と言うと泣きそうになった。普段意識はしていないけれど、口に出すと重みがある。

母は「ならないよ。あなたはならない。なるなんて思っちゃいけない」といつになくキツイ口調で言った。




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