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ブレイクダンスとAIで何ができるのか

こんにちは!ブレイクダンサーでエンジニアのFollowTheDarksideと申します。

私は「ブレイクダンス × AI」という2つの要素を掛け合わせることで、自分のバックグラウンドを活かしつつ様々な研究開発や作品制作を行ってきました。本記事では、一見相容れないようにも思えるこの2つの要素を交えることで具体的にどんなことができるのか、過去の作品と一緒にご紹介します!

そもそもブレイクダンスとは

ブレイクダンスとは1960年代後半にアメリカはニューヨークのブロンクス地区で生まれた踊りといわれています(諸説あり)。当時のブロンクスは非常に治安が悪くギャングもいたのですが、その抗争において銃の代わりにブレイクダンスによるバトルが取り入れられ大きな発展を遂げていきました。

ちなみにブレイクダンスという名前は当時のメディアに付けられたといわれており、正式名称はBBOYINGであると私は聞いています。ここ最近の間でさらに広がりをみせ2024年パリオリンピックの正式種目に選ばれるまでになりました(合わせてBreakingとも呼ばれるように)。


そんなブレイクダンスの特徴として、動きの幅が非常に広いことが挙げられます。他ジャンルのダンスは立ち踊り中心となる場合が多いですが、ブレイクダンスは頭からつま先まで地面を這いずり回るかのように全身をフル活用します(もちろん立ち踊りも)。

一般の方がイメージされるであろう頭や背中でぐるぐる回る動き(パワームーブ)や床に手をついて足捌きを魅せるフットーワーク、柔軟な体を活かした軟体系、ダイナミックなアクロバットなど数多くのダンススタイルが存在します。そうした背景もあってブレイクダンスではオリジナリティーが非常に重要視されており、他の人の動きを真似することをバイトといってディスの対象となったりもします(いわゆるパクリ)。過去にバイトに関する記事も書いたので気になる方はぜひ読んでみてください。


AI、そしてDeep Learningとは

続いてAIについても簡単に説明します。AIとはいわゆるArtificial Intelligence(人工知能)のことであり、用語としては1956年に行われたダートマス会議にて誕生したものです。

意味としては、人の知的なふるまいを代わりにコンピュータで行うための技術や研究分野を指す場合が多いようです。ここ数年でAIという言葉が広く使われるようになりましたが、その背景にあるのがDeep Learning(深層学習)であると言われています。ニューラルネットワークというものを使い大量のデータを学習させ分類や予測を行う機械学習の手法の一つです。物体認識のような画像処理の分野での活用が有名ですが、その対象はテキストであったり音であったり様々です。


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ここで「AI」「機械学習」「深層学習」と3つのキーワードが出てきました。ここで説明すると長くなりすぎるので、違いが気になる方はぜひご自身で調べてみてください。ちなみにAI自体も定義が難しい言葉です。私が過去に人工知能系の学会に参加したときも「時と場合によってAIの定義は変わる」というようなお話を聴きました。昔はシンプルな条件分岐のプログラムもAIと呼んでいたりしていたのが、最近では深層学習ありきでAIと呼ばれていたりもします。良くも悪くも何となくでAIという言葉が使われることが多いので、その製品やサービスの背景にある技術や歴史にも着目できるとモノの見え方が変わってくるかもしれません。

※ちなみに私はダンスもAIも独学です。間違い等ありましたらぜひコメントにてご指摘お願いします。m(_ _)m


作品例1 「DanceAI Project」

ではそんなブレイクダンスとAIを組み合わせることで生まれた作品を実際にご紹介していきます。

1つ目は「DanceAI Project」です。Projectというだけあって1つの作品というよりは、一連の活動や研究開発を指して使うことが多いです。本記事ではその中で制作された作品を抜粋してご紹介します。


「Dance AI for Beginners」では、AIによってダンサーの動きの分類や技の熟達度の評価を行うシステムを開発しました。加速度センサーが組み込まれた靴(ORPHE)を使って収集されたダンサーの基本的なステップや技に関するデータをAIが学習することで、リアルタイムでダンサーの踊りに対してフィードバックを行います。これにより、ダンス経験者が少ない学校の体育の授業やレッスン現場での支援にもAIが活かせるようになるでしょう。


「Visualization of Dancer's Emotional State by Deep Learning」では、AIによってダンサーの情動状態の判別・可視化を行うシステムを開発しました。今回は靴ではなくスマートフォン(iPhone)をセンサーとして使用しているので、より一般の方でも体験しやすい形となっています。また、ブレイクダンスというとどうしても技に注目がいきがちですが、実際の現場では喜びや怒りなど感情がダンスに及ぼす影響も非常に大きいです。本作ではaggressiveとpassiveという2つの状態を軸にダンサーの情動体験を共有するための開発を行いました。

ちなみにデータ収集のために開発したアプリケーションはGitHubにて公開していますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。


これら以外にも別のデバイスを用いた開発や、ブレイクダンスの紹介でも述べたオリジナリティーに関する研究を本プロジェクトでは進めています。本記事の執筆時点でも新しい作品を製作中ですので、また機会あればご紹介させてください!


作品例2 「BreakGAN」

2つ目は「BreakGAN」という作品です。図らずもシリーズものっぽくなりました。


1作目にあたる「BreakGAN」では、AIによりもう一人の自分ともいえるダンサーを生成しました。この作品ではGANという機械学習の手法を用いており、AIに大量の画像を学習させることで新たな画像を生成することができます。さらにGANへ入力するパラメーターを調整しながら画像を連続して生成することで、上に貼ったようになめらかに動くモーフィング動画を作り出すことができます。

今作のポイントはダンス動画から書き出した連番画像を学習させることで、そのダンサーのスタイルを反映しつつも本来ならありえないような動きをAIが出力することです。人間の発想にとらわれないAIならではの踊りがダンサーにとってのオリジナリティーにも繋がるのではと期待して本作を制作しました。ちなみに動画で使われている音楽もAI(Drums RNN)によって制作されたものです。


「BreakGAN feat. BBOY STEEZ」は前作のBreakGANをより発展させた作品です。GANの出力がダンサーの創造性を刺激するのではというコンセプトは同じですが、今作では「人間 vs AI」というダンスバトルをイメージして制作しました。工夫した点として、Webカメラを使いリアルタイムで人間のダンサーの動きを解析することで、その結果をもとにGANが出力するAIダンサーのパターンを決定しています。ダンスバトルは自分と相手とのコミュニケーションの場でもあるので、その形を本作にも取り入れるためこのような形となりました。透過スクリーンやLEDを用いることで演出面でも工夫した作品です。

BreakGAN関連の作品は以下の記事でも詳しく解説していますので是非そちらもチェックしてみてください。


さいごに

以上、「ブレイクダンス × AI」をテーマにした作品を紹介させていただきました。ダンスパフォーマンスの世界にも最近はテクノロジーを取り入れたものがたくさん登場してきています。エンジニアとして非常に喜ばしい状況ではあるのですが、同様に私はダンサー出身として文化的な側面も活かした作品制作を心掛けてきました。特にブレイクダンスはHIPHOPカルチャーを代表する1つの大切な要素でもあり、そのカッコ良さを皆さんに知っていただくためにも引き続き作品制作を続けていきたいなと思っています。

また普段はダンス系に限らずクリエイターとしての活動もしていますので、各種SNS等チェックいただけると幸いです。よろしくお願いします!


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