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晴れ、時々私魔法少女!

19時、スーパーに並ぶ長蛇の列、店内に響き渡る謎のボサノバ、新卒っぽいスーツの女の子につい目がいく。
重たい重たい荷物を持って、手提げからは大根がにょっきり顔を出してる。
卵は冷蔵庫がもうすぐ来るから、ちょっと考えてから6つ入りにした。
こうやって日常の小さな小さな些細なこと、ちょっとずつ失敗しては知って行って、処世術と知見を増やしていくのかな。
私はと言うと、みすぼらしいスーパー、面接の時から一緒に戦ったスーツを着て、すっごく嬉しくてニコニコしてた。



「私会社には入らないからね!フリーランスになる」
中学生か高校生の頃、こう言って親を心配させていたな 笑
覚えたてのふりぃらんす、なんて言葉使っちゃって。
そこに計画性はまるで無いのに自分の能力を過信して。

無条件に大人が大嫌いだった。
先生も嫌い、怖い、わかってくれない。
ううん、違うの。今ならわかるよ、裏を返せば私をわかってくれなくて怖い、辛い、さみしかった、そうだよね?
大人はわかってくれない、じゃなくて大人にわかって欲しかった。 そうなんでしょう?

今なら分かるんだ。
普通をバカにしているうちはまだまだずっと子供だったという事を。
死んだ目をした大人とかロボットみたいだとか。
憶測の判断、意地悪な印象操作。
あのね、そう言っていいのは同じ経験をした人間だけなんだよ、と言ってあげたい。
だって、きっと同じ事を経験したならばそんなこと絶対に言えないはずだから。

自分を特別視して周りを見下さなきゃ自分を確立出来ないヤワな大人よりも、周りの全てに尊敬を持って接することができる大人になりたいよ。

つまんなくなりたくない、つまんなくなりたくない!
思春期の私が地団駄を踏む。
人とは違う、衒った、一緒じゃつまんなくて、私だけ別ルールで、朝は起きたくないしずっと夢見てたいよ。
ねぇ、子どもでいてよ。子どもがいいよ

あはは、うーんでも私、気付いちゃったんだ。
普通の中で特別を見つけられる人の方が、ずっとずっとかっこいいよ。
だって魔法少女は普段はクラスメイトの、隣のあの子かもしれないもん。心の少女が目をぱちぱちさせた。


魔法みたいなキラキラは、10代の疾走感はドキドキするし、苦しいし、時には痛みを伴うぐらい瞬間的で鮮やかだ。
でも、日々を過ごしていく中で紛れて言っちゃうドキドキを注意深く見つけて、君だけの魔法をかけられちゃうようなそんな大人、すっごくすっごくチャーミングじゃない?

確かに毎日は特段おもしろくないよ。
嫌なこともふざけるなってぐらい連続で沢山あるし、モヤモヤすることもいっぱいある。私なんてよく自分と喧嘩するしね。
でも、あらゆる問題も困難も自分にとってプラスになる課題だって思える私の事、私はすっごくすっごくかっこよくて好きなんだ。
例えば朝早く起きることだって、見方を変えれば生活習慣が強制的に正しくしてくれる、私の健康を保ってくれる良い自制になるし、社会人になることだって、お仕事という役目が貰えて、こなすだけで自信が貰える魔法みたいだよ、すごく嬉しいし有難い。

願わくば私は、かっこいい先輩になりたいんだ、かっこいいお姉ちゃんになりたいんだ。
年下の君が、弟が、後輩が何か欲しいものがある時、サラッと奢ってあげられちゃうような、かっこいいお姉さんになりたいんだ。なれるかなぁ

普段はきちんと社会人っていうドレスコードで日々の試練と戦っていくよ、掃除に洗濯、お仕事人間関係、資格にお料理。
爪は短く髪は黒く、メイクは控えめに。

でもね、休日。私には大大大好きな写真があるから、写真を撮る時は、写る時は私のなりたい育実に変身できちゃうんだ。
育実はフラストレーションが溜まるほど淫靡に照らされその横顔は大人の女性だし、幸せな時ほど淡く綺麗な光を放った少女になれる。
ねぇ、まるで魔法みたい、魔法だよ。

平日は社会人、休日は魔法少女。
それってすっごくカッコイイ。
地に足は着いているのに心にはいつでもクルクルと艶やかな童心が宿ってるなんて、なんて成りたかった大人なんだろう。
私はさ、幼い頃の私に今ならちゃんと自慢できるよ。

「ねぇ見てよ、あなたは歳を取るほどどんどん心も体も健やかで素敵なお姉さんになってるよ、みんなに自慢してもいいよ、でも魔法が使えちゃうことはさ、みんなには内緒にしてね」
少女はずっとずっと可笑しそうにくすくす笑っていた。





写真は全てアツシサカモトさんに撮影して頂きました。ありがとうございます!

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