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鎖骨のタトゥー

ていうか逆に、こんな時じゃなきゃ書けないから。
人間は感情の生き物すぎる。

最近眠くて仕方ない。眠くて眠くて仕方ない。体が思うように動かなくて驚く。
眠くて悲しくて仕方ない。理由が見当たらなくて驚く。
生きてると悲しいしお腹が空く。
先程からずっと同じ曲を3時間リピートしている。
女の子が好きというよりも、珠玉みたいな友人が好きで、手に余らないほどの素敵な彼女たちにシーズン毎に何とか時間を捻出して出会いたい。
友人が大好きで大好きだ。

先日、大好きな恩師と初めてご飯に連れていってもらった。そのことをずっと悔やんでいる。
私は相変わらず会話が下手くそで、どうしてこんなこと言ってしまったんだろう!
や、どうしてあんな事言えなかったんだろう。が常で、不器用である。
いざ顔を見合せて座るとなんでこんなにも居心地が悪いのか。
先生の顔が上手く見られなかったし、あんなに同期の誘いを断って今そこに居たのに、上手くたち振る舞えなかったのか。

一瞬を各個人の身勝手に永遠に換算することはエゴである。
そんな何度も繰り返された私にとっての嫌なことも、私は簡単に自分で作り出してしまう。
ぁあ、なぜあの時あんなこと言ったのか。
あーー。

緊張し過ぎてお酒に頼った結果、まるで子供じみた振る舞いをしてしまい、本当に苦しい。
早く大人になりたい。私の思い描く大人に…。
余裕が無いし落ち着きがないし…。
焼き鳥を上手く串から外せなくて「本当に不器用だなぁ」と何度言われたことか。
お前の父になった覚えはない!と笑われながら煮玉子を食べてもらってポテトサラダを食べてもらって…。ぁあ…
本当に苦しい。
また会う時にはもっと落ち着いていたい



同じ精神の子に出会った。
というか、出会う運命だったに近く。
彼女の言いたいことは全て言わなくてもわかる。私にはそういう力があり、彼女には芯の強さと私と似通った精神の形を持っている。

ラフで、気軽で親しみやすいのに堅い入れ物に包まれた美しい感性がキラキラと光っていて、彼女は淡く青い貝殻と、それに包まれた真珠を彷彿させる。今思い出したら彼女は幻みたいな美しい貝だった。

若さを換算させていることに、私たちは気付いていた。
神は私たちに若さを与え、それを取り除いていく、この完全さ。
恩師は私に「有限だから嬉しい」と何度も言っていた。
私たちが永遠の生命を持った時、きっと私達は永遠をさ迷い、さすらうだろう。
同じ夕陽が二度と訪れず、強引に作り出した概念は概念に過ぎず、私たちは生まれ、死へと足並みを揃えて進んでゆく。

若さを享受し、失い、考えた上で執着は取り除かれてゆく。死への安らぎと赤子の無垢は似通っている。

10代が閉じる時は「若さ」への第一関門が閉ざされる感覚と似ていた。
衝撃は同時に安堵と似ていた。
これでもう戦わなくていいのだという羽休み。
若さは、燃えるようなエネルギーはよく滾り、そして疲れる。
私は親友と一緒に羽のタトゥーを入れた。20歳が終わる最後の月だった。

無垢は誇るものでは無いのに私たちは無垢を誇張した。
制服に換わる代替品など、どこにもないような気がした。
若さが閉ざされることは終わりを告げられるような気持ちだった。

三年ぶりに出会った女の子に「やっと人間になったみたいで嬉しい。あなたが素敵な大人になれて本当に嬉しい」目に輝きが生まれた、と教えてもらった。
病むことや、閉ざしてゆくこと等、周りに心配や影響を及ぼしてることなど微塵も気付いていなかった。
若かった。今よりもずっと。いや、幼かった。
幼さがこんなにも私の大切な人に心配をかけてることなど気付いていなかった。
大人になる道を選び、昔とは違うから気付けた知見であった。

羽のタトゥーは記号化した制服には似合わず、素肌の私にはとてもよく似合った。
一人で歩くことは難しかった。親友の存在に何度も救われた。自傷跡はアクセサリーだった。
それでも、二人なら歩き出せた。
溺れていても引っ張ることが出来た。
死の淵から生命へ。
私が弱まっても彼女は光をくれ、彼女があちら側に行こうとすれば私は彼女の白く柔らかな腕を強引に掴めた。

わたし達は2人でようやくひとつになれた気がした。
薄汚れていて汚くて、それに気付く度歩みを止め、涙が出てくる。
それでも、2人なら一条の光の方へ進めた。
今ならその意味が恥ずかしげも無く言える。タトゥーを後悔したことなど1度もない。
肌に生きた証を刻んだまま死へと向かいたい。
良くなりたい。大丈夫になりたい。
若さじゃなくて知性や生き様を誇りたい。

「何故なら、私は、同時代性という言葉を信じていないからだ。時代のまっただなかにいる者に、その時代を読み取ることは難しい。
叙情は常に遅れて来た客観観の中に存在するし、自分の内なる倫理は過去の積木の奥に潜むものではないだろうか」
『僕は勉強ができない』山田詠美


photo 葵 Twitter/ @aoii6327
https://www.instagram.com/@aoii6327

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