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2022年元旦朝刊7紙斜め読み

昨年6紙でやってみた元旦朝刊斜め読み。今年は7紙で実行。ネット、特にSNSは自分の興味のあるものや考えが近しいもの中心に表示されるから、7紙を読むことで普段しないものの見方や接することの少ない意見などに触れる機会になった。大事だなと思った。

読んだのは以下7紙。
・日本経済新聞
・朝日新聞
・読売新聞
・神奈川新聞
・産経新聞
・東京新聞
・毎日新聞

【沖縄】

2022年は沖縄が日本に復帰して50年という年なので、沖縄についての書きぶりから。
思いを一番感じたのは毎日新聞。1面に「『復帰っ子』沖縄の50年つむぐ」というタイトルで復帰50年の節目であることを伝えている。社説でも「シビックテック」が沖縄で、コロナや地元議会の関連情報の発信が進んでいると紹介し、3面総合面では「偽情報は安全保障問題」の中で危険性が高まる対象として沖縄に触れている。「米軍基地が集中する沖縄は世論が分断しやす」いことが要因かと。
読売、日経、朝日、産経には事件報道、コロナ、参院選展望で少し言及はあるがほぼないと言える範囲。
神奈川と東京はどちらも地域面で、横浜市鶴見区、川崎市で育まれてきた沖縄の文化について伝えている。また神奈川の社説は印象に残った。特に次の一文。

沖縄の現実を直視することは、この国の成熟度を測ることにほかならない。

神奈川新聞2022年1月1日朝刊社説

【資本主義】

日本経済新聞2022年1月1日朝刊

最も読みごたえもあったし今社会課題として関心が集まっているものの多くに関連すると感じたのが日経1面の「資本主義 創り直す」だ。フレキシブルとセキュリティーを合わせた「フレキシキュリティー」は意識したいキーワード。記事の中で日本社会について「日本は周回遅れ。安全性はあっても柔軟性に欠ける」と言及。ここでいう安全性は雇用の安全が終身雇用制度で守られてきたことを主に指しているが、もはやそれも危ういのが今日。「日本スゴい」という論調から脱却し、日本を客観的に捉えるこういう新聞記事や報道が増えるといいと感じた。日経はこの論調が全体的にあって、コラム春秋も冴えていた。「シャワートイレや100円ショップを外国人に『日本スゴい』と褒められているうちに、世界のほうがスゴくなっていた」。資本主義についてはさらに社説でも「資本主義を鍛え直す年にしよう」と謳っている。
フレキシキュリティーの解説の中に、次のような部分があり、仕事で労組のみなさんと関わる機会が多いので興味深かった。「デンマークの職業訓練は政労使の3者が緊密に連携する特徴がある。カリキュラム内容を経営者団体と産別、職業別の労組が話し合って決める」。労組にできることはまだまだあると感じた。
毎日の経済有識者 新春座談会「日本が目指す新・資本主義とは?」も読み応えがあった。誰を大切にするのか、どういうミッションを掲げる企業なのかが、今後ますます問われそう。青野慶久氏の「脱『おっさん文化』を」はほんとうにその通り。

日本の低成長の根本的な原因は、年上の男性による支配的なヒエラルキー、つまり「おっさん文化」の存在だ。若い人が活躍できず、女性も入っていけない。新しいアイディアが採用されず、生産性も上がらない。組織のモデルを変えなければならないが、年上の男性は実権を手放さない。そんな組織から若い人が逃げ出し、ミッションを掲げて人を大事にする組織にどんどん移動していけば、日本らしい新しい資本主義の形が実現すると期待している。

毎日新聞2022年1月1日朝刊

【脱炭素/気候危機/SDGs】

産経新聞2022年1月1日朝刊

資本主義社会においてどう実現させるのか。
読売は社会面の35面の3分の2を割いて東京都の脱炭素の取り組みを紹介。都が保有する施設に太陽光パネルを設置するというもの。しかし都内全体の排出量に占める割合はごくわずかだと言う。東京都は2030年までに2000年比半減、2050年までに実質ゼロという目標を掲げている。
目標設定や今回の取り組みの是非は詳しい方にぜひお願いしたいが、私は具体的な数値目標が出され、誰もがその進捗を意識することは大切だと思う。「気候非常事態宣言」を出した自治体の取り組みやその成果を追えるようにする報道などがもっと増えるといい。
脱炭素社会を実現する技術を産経が経済面でイラスト付きで紹介していた。個人的には飛行機で早く実現させてほしい。
東京も12面の特集で大きく扱っていたテーマ。斎藤幸平氏のインタビューが印象に残った。

「重要なのは開発ではなく『持続可能』の方。地球の許容できるものは有限なのに、人類の営みはそれを大きく超え、次世代の未来を脅かしている。持続が大切と考えるのなら、無限の成長願望から脱却しなければならないのは当たり前だ。」

東京新聞2022年1月1日朝刊

【社説/1面コラムなど】

各紙の1面のコラムは、随分違うものなのだなと改めて認識。朝日を読んで育った私にとって“天声人語”は馴染み深いが、他紙のものはほとんど意識してこなかった。
毎日の“余録”の白紙の日記に希望を感じた。また2022年は毎日新聞創刊150年とのこと。
産経が1面に載せた論説委員長の「さらば『おめでたい憲法』よ」、読売の社説などからは「戦争をしたい人」の存在を強く意識させられる。「平和の方法」として「勝てると思わせないためにこちらが強いと思わせる」という方法が紹介されている。産経の論説委員長はもしもの事態として特に台湾や尖閣に触れている。どちらも戦争をすることが前提のように読める。戦争を起こさせないことが政治の仕事だと思うし、争う必要などないと思わせる外交を私は望む。

【外交/海外】

ロシアとアメリカのウクライナをめぐる首脳オンライン対談をほぼ全て1面で報じていた。
韓国の被選挙権の引き下げが興味深い。25歳から18歳へ。これにより高校3年生で議員になることもできる。
RCEP発効を大きく扱う新聞が目立った。巨大経済圏の誕生。
中国について日経が「岐路2022」の1つを割いて論じていた。読売の政治面「『語る』新年展望1⃣」では各界の有識者から話を聞くようで、その最初が安倍晋三氏。この話ぶりで気になったのが「連帯を断つ」とする外交姿勢。つながり合う外交が大切ではないか。人と人でも、会わない、話さないことで互いの不安、相手への不信などが増す。それは国と国も同じだろう。産経が8~9面で岸田首相と谷原章介氏の新春対談を掲載し、その中でも中国との外交について触れられていた。谷原氏が岸田首相に対して次のように話した部分に共感した。北京五輪へ首脳を派遣しないとする「外交ボイコットでのメッセージの伝え方もあるが、きちんと対話をした上で、『こう思う』と考えを伝えるやり方もあると思う。中国とは数千年単位の長きにわたる関係がある。そこも忘れてはならない」。

【人権/憲法/民主主義】

神奈川新聞2022年1月1日朝刊

日経30、31面の特集で40人の“主要企業経営者”が株価を読んだり景気判断を尋ねられたりしているが、すべて男性であった。
神奈川21面の特集「多様“性”のゆくえ LGBTQから見た社会」。1面割いての特集はこれだけだった。「当然いる」前提が必要という、トランスジェンダーモデルのイシヅカユウさんに共感。同性婚や夫婦別姓など、「法整備遅れガラパゴス化」との指摘は日経で紹介されていたフレキシキュリティーにも通じる。神奈川は23面の特集でも多様性を扱い、そのタイトル「祝わたし ありのままこそがパワー」がいいなぁ。
毎日19面くらしナビもジェンダーがテーマ。もっと広くわかりやすく情報を届ける必要性に触れ、「『ジェンダー』という言葉にこだわらなくてもよく、誰が苦労しているかなどを『翻訳』してあぶりだす記事でないと、広く届かない気がします」という林香里氏の考えを紹介。大事な視点。
2021年、入管の問題をつきつけられたし、技能実習生の現実にも考えさせられる出来事が多かったことからすると、移民や在日外国人に言及する記事が少ない印象。その中にあって神奈川の17面地域面の石橋学さんの記事は目を引いた。「ハルモニと桜本再び」。2004年の『花はんめ』の続編が今夏公開予定とのこと。hanahanme2021@gmail.comから募金やサポートができるそう。
これは気候危機やSDGsテーマでもあるが、日経の6~7面の特集で宇沢弘文さんのアイディアを娘の占部まり氏が紹介している。「比例型炭素税」「大気安定化国際基金」などで格差拡大を抑制しながら多くの人が温暖化対策に取り組めるシステムを、20年?30年?前に考えていたそう。気候危機は民主主義にも脅威だと、東京の1面に書かれている。
朝日は社説を「憲法75年の年明けに」とし、プラットフォーマーGAFAには国家をしのぎかねないパワーがあり、どう人権を守るのかが課題と述べている。
こうして7紙読むだけでも人権をどう守るか、いくつもの観点から取り組む必要を感じる。情報という観点も重要で、私は日本国内の情報管理が、個人の尊重より国民を管理するために見えて不安になることが多い。

同質より異質を意識する1年に

私が2014年に出会い、学び、実践し続けているコミュニティ・オーガナイジングにおける“関係構築”では、同質な者より異質な者との関係構築を意識的にしようという考え方がある。意見が異なるからと言って対話を避けるのではなく、対話し、互いの考え方やその背景にある経験、そして価値観(判断基準や大事な強い思い)を知り合おうというもの。その大切さを、スタンスの異なる7紙を読むことでも実感できた。2022年の私のテーマの1つになりそうだ。

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