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2021年元旦朝刊6紙斜め読み

ここ数年私の元旦は、両親・弟家族(弟・パートナー・子ども3人)総勢8人で迎えていたためただただ慌しかったが、今年はコロナのおかげで両親とののんびりゆったりしたものに。そこでいつもお世話になっているしんさんを真似て、私もコンビニから5紙調達し、実家で購読している朝日と合わせて6紙を斜め読みしてみた。
自宅では紙の新聞は購読しておらず、こうして時間をとって新聞を読むのはひさしぶり。そして複数読むことで視点なのか目指す社会なのか、その違いをなんとなく感じられるのも興味深かった。

読んだのは以下6紙。
・朝日新聞
・神奈川新聞
・東京新聞
・日本経済新聞
・毎日新聞
・読売新聞

【1面】

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トップ記事は全紙異なり、一番新年ぽくないなと思ったのは朝日の「吉川氏に現金 さらに1300万円」だった。一番希望を感じたのは日経の「脱炭素の主役 世界競う」。スイス北部にあるという「大気中の二酸化炭素を吸い込み、地下2千メートルで岩に変える」という巨大装置の写真が掲載されている。日本、米国、EU、中国だけでも、カーボンゼロのために2021~50年にエネルギー、運輸、産業、建物に計8,500兆円もの投資が必要とのことだが、方法があるのは希望。日経1面に35年までに無人戦闘機を配備するという記事があり、二酸化炭素を排出するのかしないのかに言及されておらず、もしバンバン二酸化炭素出すならせっかくのトップ記事も残念だなと。

【沖縄】

6紙のどこにも見当たらなかった。衆院選の全国立候補予定者リスト以外には。これが首都圏と沖縄の距離。

【東日本大震災から10年】

神奈川新聞と東京新聞がそれぞれ、3面(総合)、2面(総合)で共同通信のアンケートを基にした記事を掲載。東京新聞では、福島と岩手・宮城を比較し、福島県民(避難者含む)は「復興が順調」の回答が30%、岩手66%、宮城80%でその差が際立つ。神奈川の記事には「ふる里は更地ばかり。戻れるようになる姿が想像できない」とのコメントがあった。この種のアンケートでふる里に「戻りたいか戻りたくないか」という聞き方があるが、この質問でいったいどういう思いを引き出したいのかいつも違和感。好きで戻らないのではないのだ。戻りたくても戻れないのだ。その根本がスルーされているアンケートだといつも思う。

【女性】

衆院選には朝日以外が特集面などで割と大きく紙面を割いている。その中で女性の候補者数に言及したのは東京新聞のみ。828人の候補者中女性は134人。

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東京新聞が8面(特集)で「立ち上がる未来世代」として7人の10~30代の活動家を紹介していた記事が印象的。ハズルール氏と周庭氏は現在拘束されているが、紹介された他の5人の中にも身の危険が迫る人はいるという。勇気を持って声をあげ行動している人たちと仲間になり応援し一緒に希望を広げられる社会にしたい。

【核兵器禁止条約】

朝日は社説で長崎原爆資料館の入り口の「長崎からのメッセージ」に触れ、「『核なき世界』への大きな一歩である」とした。毎日は7面(国際)で、東京が社説でそれぞれ扱っているが、唯一で最後となるべき被爆国日本での関心が高いとは思えない紙面の割かれなさ加減だ。東京の社説の中で、1955年4月の「ラッセル・アインシュタイン宣言」から引用された「人間性を心にとどめよ」が深い。

【国内のリーダー】

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神奈川が菅首相とDNA会長の南場智子氏の新春対談に、6、7面(特集)を割いた。DNAはベイスターズのゲームを使ってコロナ禍での有観客試合の実証実験をしていて、それをバッハ会長も喜んでいたと菅首相が伝えている。ただ全般的に神奈川新聞社社長の質問に両氏が答えているだけの部分が目立ち「対談」らしい記事ではない。南場氏は首相や国にとって耳に痛い発言をもっとしたのではなかろうかと邪推できてしまうくらいには。

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読売が4面(政治)で森喜朗氏のインタビュー掲載。「五輪 不安な世界へ光」というタイトルで、森氏は「何としてもトライ」したいと述べており、背筋が凍る思い。
同じ読売の9面(経済)が、三井物産の石炭火力 海外撤去を報じており安堵。早ければ2021年中に動き始めるとのこと。全然早くないのですぐやってください。

【その他雑感】

日経が38、39面に前澤友作氏の全面広告を載せていて、その中の「スマート選挙」はぜひ進めてほしいと思った。
朝日13面(オピニオン)の米津玄師氏のインタビューの中で次の部分が印象に残っている。今年発表された『カナリア』の制作について問われて「実は、デモの段階では、暗くて救いのない音楽を作っていた瞬間もありました。でも、苦難を苦難のまま書くのは、簡単です。少なくとも生きていかなくてはいけないわけであって、希望を提示できるものでないと成立しないと思いました。」

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毎日7面(国際)では、「タイの知」と呼ばれる仏教思想家スラック・シワラック氏が、タイの学生らによる反体制デモに関して思いを語っていて、大学生だけではなく高校生や中学生も参加して反旗を掲げていることを誇りに思うと。ただ、王室に対して失礼は言葉を使うことは慎むべきで、要求は理にかなっているのだから、親世代の意見を尊重し、辛抱強く耳を傾け、自らの心を開いて対話に努める必要があるとも述べている。
6紙読んで感じたのは、社説で複数が民主主義に触れていたり、コロナ禍での打ち手が意思決定に時間のかかる民主的社会より中央集権的社会の方がうまくいっていることからの動きを懸念する記事を載せていたりするが、新聞社としてその役割を自らに問い、少なくとも日本という社会がこれ以上民主的でなくなることを是正しようという強い思いは伝わってこないことだった。読者に対して、衆院選もあることだし「意見を持て(読売)」と言うなら、「良い質問を持て」と私は言いたい。予定調和のない会見で真実を引き出す質問力をぜひ取り戻してほしい。

【本と新聞】

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朝日と毎日は2面・3面に同じ広告が載っていた。新潮社と文藝春秋。文藝春秋は他の新聞にもあった。この広告で紹介されている『スマホ脳』(新潮新書、アンデシュ・ハンセン著)と、朝日3面(総合)で紹介されているパオロ・ジョルダーノ氏の『コロナの時代の僕ら』と『素数たちの孤独』の3冊が今日紙面から拾った「読みたい本」。

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