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失敗しない人なんていない。みんな恥や悔いを抱えて生きている。(朝井まかて「グッドバイ」を読んで)

突然ですが、「歴史小説」と「時代小説」の違いってご存知ですか?

↓困った時のWikipediaさま

歴史小説は、主要な登場人物が歴史上実在した人物で、主要な部分はほぼ史実通りに進められる。
時代小説は、(中略)架空の人物を登場させるか、実在の人物を使っても史実を異なった展開をする。


ざっくり言うと、
歴史小説=ノンフィクション
時代小説=フィクション
みたいな感じ。

私は、歴女なので、歴史小説も時代小説も好んで読むのですが、だいたい作者ごとに、書くジャンルが決まってます。

司馬遼太郎といえば、歴史小説。
藤沢周平といえば、時代小説。
みたいに。


その中で、読み進めるまで、歴史小説なのか時代小説なのかわからない不思議な存在なのが、朝井まかて。

私は、この直木賞作家の小説が好きで、ほぼ全て読んでいます。

だけど、題名からは、全く内容が推察できないものが多くて、読み進めているうちに、あれ?これ葛飾北斎の話?とか、シーボルトが出てきた、とか、明治神宮ってこうやってできたんだ、っていうのがわかる。

もちろん、最後まで全くのフィクションという話もある。


そして、最近読んだのが、


朝井まかて「グッドバイ」


これも、題名だけでは内容が全くわからない。

だけど、自分の好きな作家には全幅の信頼を置いてますので。

絶対面白いはず、と読み始めました。


内容は、幕末の長崎で、油商の女主人が、外国相手にお茶の輸出を始めるというもの。

主人公は、大浦慶。

私は、この名を知らなくて、ずっと「時代小説」だと思って読み進めていたんだけど、途中であれ?と思い始めて調べたら、実在の人だった。

↓困った時のWikipediaさま(2回目) 

大浦慶(おおうらけい)
江戸時代末期(幕末)から明治にかけての女商人。日本茶輸出貿易の先駆者。


この女主人がすごい豪快な人でねー。

やったこともないことを無我夢中でやっていくんですよ。

全くの素人なのに、お茶を掻き集めて、外国人相手に売り込んで、お茶の栽培や焙煎、英語も覚えたりして。

すごい魅力的な人だし、芯があって、自分も商売している身としては憧れる。

で、脚色も入ってるのかも知れないけど、まだ何者でもない頃から、大隈重信や岩崎弥太郎との人脈を築いたりして。

すごい感情移入していくんだけど、後半、詐欺に遭って、途方もない借金を負わせられるの。

それを、逃げもせず、2年かけて返済するんだけど、その後、新しい事業の話が舞い込んできて、

「私は詐欺に遭って事業に失敗したのに、なんで?」みたいなことを主人公が言ったときに、掛けられたのが、タイトルの言葉。

長崎弁でいうと、

「しくじらん人間なんて、この世のどこにおっと。皆、失敗ば重ねて、恥や悔いで胸ん中ば真っ黒になっても、そいばを抱えて生きとっとじゃなかね」


この言葉に、主人公は涙して、新しい事業を引き受けることを決意するんだよ。

見ててくれる人は見ててくれるんだ、と。


そして最後は、明治政府から、日本茶輸出貿易の先駆者としての功績を認められ、茶業振興功労褒賞を賜るのだ。


事業をしている人は、励まされる部分が多いんじゃないかなと思う。

文体が優しいし、幕末の有名どころ(坂本龍馬とかグラバーとか)も出てくるから、読みやすいですよ~。

ホッとしたい時に、どうぞ。

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