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ゴジラ×コング 新たなる帝国を詠む

心には大きさがなく身の丈がビルほどもある些細な孤独
善悪のある暴力は人間の特権だから神様はラク
帰路はまたわたしを置いて延びていく失ってすらいない故郷へ
喧嘩にはメリケンという作法なら世界共通肉体言語
悪党はナイフを持って舌を出す運命はただ破滅をくだす

ゴジラ×コング 新たなる帝国を詠む5首


 ゴジラ-0.1の公開から約半年……はやくもゴジラの新作がやってきた!しかもハリウッドから!予告ではすでにゴジラとコングがめちゃくちゃに謎の空間を駆け抜けている。となれば、観客たちも自重に膝をきしませてでも劇場に殺到するべきだ。そういった不文律をシナプスに受信した。普段は上映中なにも口にしない派だが、ひさびさにコーラとホットドッグを買って電撃的に着席した。

 物語はコングの地下空洞における日常生活からはじまる。一仕事終えたゴリラはシャワーを浴びて、飯を食う。すると歯が痛い。独り身の生活で歯が痛むなんてひしひしと寂しいものだ。それは人間もコングも変わらない。だとして、なんなんだこれは。

 一方、地上でゴジラは殺る気満々。というかもう殺りまくっている。とにかく今作におけるゴジラはケンカのにおいを感じたとたんに助走をはじめ、相手と遭遇したときにはすでに殴っているという始末。まったく手に負えない。正直いってしょっぱなからゴジラが苦戦する雰囲気はゼロだ。

 その間に人間界におけるなんやかんやがあります。
 
 コングの方もなんやかんやあって、ミニコングと遭遇する。そっからさらになんやかんやあって驚愕の事実が発覚する。地下空洞にはなんと、暴力に支配された地獄のゴリラ集落があった。
 
 そこに君臨するスカーキングこそ本作のラスボスだ。コイツは本当にイヤなヤツだ。しかもそのイヤさを自分の個性だと割り切っているタイプの性悪な輩で、なんか長い生き物の骨を袈裟懸けにしている厨二病野郎でもある。さらには本人の実力が支配力の根源ではなく、苦痛により屈服させた冷凍怪獣シーモの威を借る腐れあんぽんたんだ。スカーキングはコングの差し歯を公衆の面前でバカにする。すぐに腕相撲が発生しそうな脳筋コミュニティで他人(ゴリラ)の差し歯をバカにするなんて。邪悪だ。これほど真っ当な悪は許されるはずがない。だとして、なんなんだこれは。

 人間界の方もなんやかんやあって、あの「スター怪獣」と遭遇する。人間ドラマも実はもう少しだけ丁寧な描写があるし、今作のテーマに通ずる大事な部分でもあるけど、いかんせん物語終盤の人間グループ自らがノリやセリフでなんやかんや感を出してくるので、なんやかんやだ。このなんやかんやの間に本当になんやかんやなノリでコングの右手になんかカッコいいメカが装着される。

 スカーキングは人間側にも危害を加えそうだし、なんとかしないとやばい。しかし単体だと厳しいと感じたコングは地上で加勢を得ることに。エジプトで待ち合わせるとノリノリでゴジラがやってくる。コングがわざわざ頭を下げにきた形だが、かまわずあいさつがわりにゴジラは殴りかかって熱線を吐く。その様子は悪友に再会できて喜んでいるようにも見えるし呼びつけられて怒っているようにも見える。余白のある暴力だ。もしかしたらゴジラと我々はラカン的な鏡像関係にあるのかもしれないなどという解釈はまったくの無駄で、みるみるうちにピラミッドがぐしゃぐしゃだ。とりあえず「スター怪獣」姐さんの登場に免じて地下空洞に向かう。共闘開始。怪獣たちはドラゴンボールZのような空中戦?のあと決着をつけるべく地上に押し掛ける。

 地上ではよほど空気がおいしいのか、ひたすらどったんばったんおおさわぎ。より理性の少ないヤツが勝ち上がるカーニバルだ。 
 予告編を観た時点で、すくなくとも本編がはじまった時点で(ゴジラ・エクス・マキナ状態なので)すぐにピンとくるのでネタバレではないとおもうのだけど、スカーキングは戦いに負ける。おそらく自分の「イヤさ」を自覚して見せびらかしていられるぶん、つまりはイキっていられるぶん、やや理性的だったため敗れてしまった(私見)。せいせいする。

 全体的にSFでもなくファンタジーでもなく、そのあわいをいく怪獣映画としか言いようのないケレン味が前作以上に強まっていた。とても楽しめた。出番の比率的にはコング with ゴジラって印象だけど、ゴジラが強すぎて物語構造すら吹っ飛ばしそうなくらいなのでよい塩梅かとおもう。コングも好きだし。次回はスペースゴジラを出してくれ!


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