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肩エンプティカンとフルカンエクササイズににおけるケガの予防

肩のリハビリと予防エクササイズについての科学的見解

エンプティカンエクササイズは、肩のリハビリや障害予防のために一般的に行われるエクササイズです。このエクササイズは、肩のローテーターカフ、特に棘上筋を強化することを目的としています。しかし、実際に行ってみると、肩の痛みやつまり感を引き起こすことがあります。その理由について、以下の研究結果から考察してみましょう。

研究結果の解説

Reinold et al. (2007)による研究では、
1.エンプティカンエクササイズ(肩内旋位)
2.フルカンエクササイズ(肩外旋位)
3.腹臥位フルカンエクササイズ(肩外旋位)

3つのエクササイズ中の棘上筋・三角筋中部・三角筋後部の活動を筋電図で調査しました。その結果、以下のことが明らかになりました。

  1. 棘上筋の筋活動レベルは、3つのエクササイズ間で有意な違いはありませんでした。これは、どのエクササイズも棘上筋を同等に強化する可能性があることを示しています。

  2. 三角筋中部の筋活動レベルは、フルカンエクササイズよりもエンプティカンエクササイズと腹臥位フルカンエクササイズの方が有意に高かったです。これは、エンプティカンエクササイズ中は上腕骨頭にかかる力のベクトルの和が上向きとなり、上腕骨頭が上方向に移動する可能性があることを示しています。

  3. 三角筋後部の筋活動レベルは、フルカンエクササイズよりもエンプティカンエクササイズのほうが有意に高く、さらにエンプティカンエクササイズよりも腹臥位フルカンエクササイズのほうが有意に高かった

まとめと考察

この研究結果をもとに、以下の提案をします。

【参考文献はこちら】
3つの一般的なリハビリテーション運動中の棘上筋と三角筋の筋電図分析

  • 棘上筋強化の目的でエクササイズを選択するなら、エンプティカンエクササイズよりもフルカンエクササイズを選ぶべきです。フルカンエクササイズでは、インピンジメントを抑えつつ、棘上筋をisolateしてトレーニング刺激を与えることができます。

  • 棘上筋の徒手筋力テストを実施する時は、フルカンエクササイズのポジション(肩外旋位)で測定するべきです。これにより、三角筋の影響を最小限に抑えて、棘上筋をisolateできます。

  • ローテーターカフの動的なスタビリティ能力を評価するためのprovocative test(症状誘発テスト)としては、エンプティカンエクササイズの動作を用いるのも一つの方法です。

ただし、これらの結論はあくまで一つの研究結果に基づいているため、他の研究結果や実験条件によっては異なる結論が導かれる可能性があります。そのため、エンプティカンエクササイズを絶対に行ってはいけないと断言するのは危険です。様々な情報を総合的に吟味した上で、自分なりの結論を出すことが重要です。

以上が、科学的根拠に基づくトレーナーとしての見解です。エクササイズ選択の際には、これらの情報を参考にしてください。引き続き、他の研究結果や新たな情報が出てきたら、ぜひ共有してください。よろしくお願いいたします。

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