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vol.8〈採銅所地域コミュニティ協議会〉ー子どもとか じいさんばあさんとか 関係ないちゃん

 緑に囲まれた校舎に、夏を呼び込むひぐらしの声が響きます。旧採銅所小学校の表札を残すコミュニティセンター採do所(以下 コミセン)、かつて学びの場であったこの教室で今日は週一回の学習塾が開かれる日です。「お家にいても勉強せんけん来とうと。遊びながら勉強できるけん楽しいんよ。」夏真っ只中、肌を赤く焼いた子ども達が、勉強道具が入ったリュックサックと、サッカーボールを脇に抱えて嬉しそうに教室に向かいます。

夏休みのラジオ体操 まだ眠いよ〜

子ども達って友達思いなんですよ


 「今日はみんなでちょっとしたゲームをしながら、問題集を解いていこうね。分からないこと、何でも聞いて。ひとつでもいいから覚えて帰ろうね。」先生役の城さんは大学生、大学では教育を学んでいます。旧採銅所小学校の卒業生で、生まれも育ちも採銅所だという城さんは、自身を育ててくれたこの場所で、地域のために何か恩返しができないものかと考え学習塾を始めました。
 地域に特別な思いがあるという城さんは、勉強だけでなく、子ども達に人とのつながりや、友達の大切さを知ってもらいたいと、授業ではコミュニケーションを題材にした遊びやゲームなどを取り入れています。また、出来る限り黒板を使わず、生徒一人一人との会話を大事にする城さん。時には教室を飛び出し、外で遊んだり、お友達の話で盛り上がったりと、子ども達にとってお兄ちゃんの様な存在です。
 「城くんの授業は、子ども達もいつも楽しそうにしてるんですよね。」と保護者の西宇さん。謙虚で地域想いな城さんは、皆から慕われています。「今日もお疲れさま、ありがとう。」と声がかかると、眉を開き笑顔を見せる城さん。その笑顔は、充実感に溢れています。

もっと人数欲しいな〜


近所の大人たちが子どもらのこと知っとるちゃんね、やけ安心できるんよね。


 地域の憩いの場だというコミセンでは、他にも多くのイベントや習い事教室が定期的に行われています。その先生や講師のほとんどが採銅所地域に住む地元の方々であるというから驚きです。コミセンでは「地域のことは地域でやる」をモットーに地域の方が活躍をしています。「一人が立ち上がればみんながサポートしてくれるんよ。だから自信にもなるし、安心感もあるっちゃないかな。」そう話すのはコミセンの事務局長で元気印の宮原さん。「事務局長なんてね、名前だけやけん。私も毎日毎日、地元の人たちにパワーを貰ってるんよ。ほらっ。」宮原さんの指差す先では子ども達が暑さも忘れ元気に遊んでいます。人が来ない日が無いというコミセン、ひとたび近所のおいちゃん達が集まれば賑やかな井戸端会議が始まります。「誰でも気軽に来れて、居心地の良い安心できる場所を皆で作りたい。」地域の方々のそんな思いが、ここコミュニティセンター採do所に新たな命を吹き込んだように思います。
 夕方の町内放送が校舎に響きます。日暮れの時間になっても、元気に遊びまわる子ども達。「何しよん。はよ帰るよー。」子ども達を笑顔で見つめる大人達の姿に、地域のあたたかさを感じました。

こういう場が、子ども達の心を育てていくんですよね。

コミュニティセンター採do所
 2022年4月、廃校になった採銅所小学校の校舎が、地域のコミュニティセンターとして生まれ変わりました。運営を担うのは、採銅所地域コミュニティ協議会。「地域のことは地域でやる」をモットーに、地域の住民が集まって、地域の課題を洗い出し、問題解決に向けてできることから少しずつ取り組んでいます。

 現在は、カルチャーセンターの運営をする「にじいろ部会」、カフェで交流の場を作る「ご縁部会」、朝市 ”My do 市” を運営する「なりわい部会」、農や自然を考える「さとやま部会」、"みなクル号" で交通支援に取り組む「つなげる部会」、防災を担う「あんしん部会」の6つの部会に分かれて活動しています(2023年10月現在)。
 毎月の清掃活動や全体会、皆で取り組むお祭りやキャンプなど、その時々で必要だと思われることを話し合い、常に進化し続けている採銅所地域コミュニティ協議会。人口減少の中で、大切な故郷に住み続けていくにはどうしたらいいのか、同様の悩みを抱える県内外の多くの地域からも注目をされています。

コミュニティセンター採do所に集う子ども達(採銅所地域コミュニティ協議会)

旧採銅所小エリア 町(まち)・長光周辺
 山に囲まれた里山らしい風景が広がる採銅所。渡来人とのつながりや銅の採掘など歴史も深く、地元愛に溢れる方が多い地域です。
 旧採銅所小学校のある町・長光周辺はオルレコースの「旧街道街並 採銅所」にもあたり、かつては採銅所駅舎地域の繁華街でした。比較的若者や子ども達の数も多く、現在でも軒を連ねる家々が当時の面影を残しています。

香春町って
 春が香る町と書いて「香春町」。福岡県の筑豊地域の北東部に位置し、石灰石の産地として日本の近代化を支えてきました。
 町のシンボル「香春岳」をはじめ、山々に囲まれた里山の暮らしは、都心部からのアクセスの良さもあって、登山好きや、歴史好き、手作り暮らし好き、半農半X志望者などさまざまな個性を惹きつけます。
(アクセス:福岡市から約70分、北九州・小倉から約50分)

ハダシノステージ08・2023年秋号




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