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新型コロナの影響で、再定義が進むリアル店舗の今。大手を中心とした「オンライン接客」の事例まとめ

フィットネスクラブを中心としたリアル店舗の顧客管理、予約、決済を行うSaaSサービス「hacomono」を提供する弊社。Withコロナ、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代における店舗ビジネスのネクストスタンダードをつくるという言葉を掲げて、日々チャレンジをしています。このオウンドメディアでは、hacomonoの機能やスタッフの紹介に限らず、リアル店舗に関わるニュース記事やコラムもお届けしていきます。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、オンライン接客の導入が増え続けている昨今。今まで通りの店舗営業ができなくなり、導入を検討している事業者の方も多いと思います。

その際、悩みの種となるのは、リアル店舗ならではのメリットや体験価値を、オンライン接客で実現するのが難しいこと。業界や企業によって活用するデジタルツールや取り組みの特徴、目的もさまざまです。そこで、今回は大手企業のプレスリリースを中心に、各社がどのような方法でオンライン接客に取り組んでいるのかを、まとめて紹介していきます。

リアル店舗と近い購買体験を提供

CASE1 ビックカメラ

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ビックカメラでは、ECサイトでビーモーションが提供する「接客オンデマンド」を2020年9月から導入。オンライン接客ツールの活用を通じて、店頭の実演販売を再現しています。

接客オンデマンドとは、対象商品ページ上に設置された専用リンクをクリックすると、専属オペレーターが接客してくれるシステム。2021年2月現在、対象となるのは「dyson」と「BOSE」の商品で、受付時間に無料で商品の説明を受けたり、質問できたりします。

商品機能の解説など、ユーザーの気になるポイントについて、さまざまな実演を用いて説明することで、リアル店舗に近い顧客体験を可能にしたといいます。

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当初は試験的に、掃除機や扇風機をはじめとする「dyson」製品のみを対象にサービスを開始していたものの、多くのアクセス数とサービス利用者から好評のコメントが多数。「お店より落ち着いて質問ができる」「店頭に行って実物に触れたくなった」など、意見や感想が寄せられたそうです。その反響を受けて、2020年11月5日からはスピーカーやヘッドホンなどの音響機器メーカー「BOSE」の製品へと対象商品を拡大しました。

CASE2 三越伊勢丹

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2020年11月に伊勢丹新宿店で提供を開始した「三越伊勢丹リモートショッピングアプリ」。動画やチャットを通じて、百貨店らしい1対1のおもてなしを提供しています。

顧客はチャット接客によって、いつでも商品に関する相談ができるだけでなく、スケジュールに合わせてビデオ接客の事前予約が可能。商品に詳しいスタッフが、丁寧な商品レコメンドや顧客の悩みに寄り添ったアドバイスを、店頭の商品を見せながら対応してくれます。

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2021年2月からは、日本橋三越本店・銀座三越にも対象店舗を拡大。日本橋店では、ホームギフト関連のコーディネートや空間コーディネートなど、新宿店では実施していない提案も。また、歴史ある店舗の特性を活かした呉服・美術関連の店舗も導入予定です。

新宿店では、三越伊勢丹リモートショッピングを開始して以降、利用した顧客のうち約50%が購入に至っており、リピーターが増加。従来は店舗に来れなかった遠隔地に住む方が買い物もするケースも多いといいます。また、問い合わせの約半数がギフト需要やコンサルティングの提案に関する相談となり、販売員が行う接客への支持が高いとしました。

ライブコマースで、ユーザーとのコミュニケーションを

CASE3 ABCマート

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2020年11月、ABCマートではリアル店舗での接客に近いライブコマースを自社ECで実施。LIVEストリーミング内でリアルタイムに情報を付加できる「TIG LIVE」を導入しました。

TIG LIVEでは、配信者が紹介したい商品の値札を読み取るだけで、商品購入ページへの導線を視聴画面に表示可能。ユーザーから書きこまれるコメントや設定したアンケートの投票結果によって紹介する商品を選べるため、押し売り通販のような形ではなく、「店舗でスタッフと会話をしながらショッピングしているような体験を提供できる」といいます。

また、固定のブースなどを用意する必要もなく、スマートフォンとハンディタイプのタグリーダーをBluetoothで接続するだけで配信ができるのも特徴です。11月に行われたライブコマースでは、「ABC-MART GRAND STAGE」と「NIKE」のキャンペーンモデルを務める古川優香さんと佐藤ノアさんが出演し、NIKEの商品が紹介されました。

CASE4 アダストリア

アダストリアは、「GLOBAL WORK」「LOWRYS FARM」などのアパレルブランドを取り扱う自社EC「.st(ドットエスティ)」のオンライン接客に注力。ネット担当者フォーラムの記事によると、サイト会員数は2020年2月期末からの3か月で20万人増、2020年3~5月期のEC売上高は前年同期比25.7%増となったそうです。

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コロナ禍で成長した一因として、同社のリリースではショップスタッフのInstagram投稿が挙げられています。ショップスタッフが店舗や個人のInstagramでライブ配信を実施。閲覧者からのコメントに対してリアルタイムで回答し、着用感などを動画で説明しています。

さらに、新たなコンテンツとして「.st CHANNEL」を2020年5月から開始。同社グループの20以上のブランドや、1500人のショップスタッフが配信した動画をまとめて閲覧することができるようになっています。ECの商品ページと連動しており、動画中の商品画像をクリックすると、そのまま購入ページに推移できるような導線を作っています。

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デジタルを活用し、パーソナライズした接客を

CASE5 花王

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2021年1月26日、花王のプレステージブランド「est(エスト)」では、LINE公式アカウントを活用したオンライン・スキンケアサポート「HOME Growing Partner」を開始。アカウント登録時に出される3つの設問の回答をもとに、仮想スタッフ「Growing Partner」が、ユーザーそれぞれの特性や悩み、ライフスタイルに合ったアドバイスを行います。

たとえば、対象商品を購入したユーザーに対し、正しいお手入れ方法や商品の使い方など14日間サポートする「フィッティングプログラム」の他、ユーザーの興味に合わせた健康や美容に役立つ情報を3か月間届ける「ラーニングプログラム」を提供します。

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また、LINEミニアプリ上でデジタル会員証を発行し、購入履歴や店頭での肌解析結果、登録した店舗の最新情報などを、いつでも簡単に閲覧できるサービスも開始。生活スタイルに合わせたパーソナルな情報提供を、オンライン上でも受けられるようになります。

今後は、オンラインカウンセリングやチャットカウンセリングなどのコンテンツを充実させるなど、よりユーザーの生活スタイルに合わせた情報や接客を行う予定としました。

CASE6 HIS(エイチ・アイ・エス)

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HIS(エイチ・アイ・エス)では、Zealsが提供する「接客DX」をスマートフォン版の旅行予約サイトに導入。チャットコマースとリアルの接客を融合したサービスを実現しました。

接客DXでは、ユーザーがチャットボットを活用して、24時間いつでも気軽に質問できる他、自由入力や選択肢による回答も可能。これにより、自由入力で相談したい方だけではなく、まだ顕在化していない顧客の潜在ニーズやインサイトを引き出す狙いもあります。

また、チャット機能にはAIだけでなく、有人対応も実施。チャットでの会話で得られたデータをもとに、パーソナライズ化した旅先や旅行プランの提案を行っています。より深く相談したいユーザーには、HISのスタッフが自社システムを活用してビデオ接客を実施するなど、スタッフによる接客と接客DXを組み合わせたオペレーションを行うとしました。


店舗だからこそ提供できる価値と、オンライン上ならではの利便性を融合し、顧客に価値を届けていく――。そんな想いが各社の事例から見えてきました。なかなかオンライン接客の実施に踏み切れていなかった方々にとって、この記事が参考になると嬉しいです。

(画像出典:各社プレスリリースより)

執筆:fujico/編集:庄司智昭