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イタリアの土産ばなし

ミラノのレストランにて。

「ああ、やったな」と思った。
 ここは、ミラノ中央駅に近い、なかなか評判の良いホテルのレストラン。久々の一人旅で、明朝のローマ行き新幹線に乗る予定だ。

 イタリアのシャンパーニュと呼ばれるフランチャコルタをグラスで頼んだ。メニューにはあるけれど、私のために抜栓するならちょっと悪いかなぁ…、と内心思いながら。

 既にグラスに注がれた一杯が目の前に運ばれる。でも、美しく立ち昇ぼるはずの泡には元気がない。

「写真を撮りたいので、ボトルを見せて欲しい」と言ってみた。笑顔の中に見えた一瞬の動揺は確信に変わる。しばらくして、彼はなぜか、新しいボトルの抜栓の儀式を始めた。初めの一杯は別物、まさか、この一本分を私につけるつもりなのだろうか。もう、先程まで抱いていた良心は無用だ。
 
 相手が悪かった。私はかなり寛容だけど、許せないのは「狡いこと」。やんわり、これはいけないことだと教えてあげようかな。
 そう、実は私、ソムリエなのよ。悪しからず。


実際に抜栓されたフランチャコルタ。このボトルには罪はなく大変美味しかったです。

その後の話。

食事の後、運ばれた伝票には、予想通り「フランチャコルタ グラス一杯、フランチャコルタ ボトル1本」とありました。一応、恥をかかせては可愛そうなので、周りに聞こえないように、指摘すると結構あっさりと両方とも削除した約半額の金額に訂正。私はその伝票にサインして、部屋付けにしました。翌朝、チェックアウト時に請求金額を確かめると、ワインが入った倍の金額に戻っていました。フロントの人に「私がサインした伝票を見せて欲しい」と言うと、フロントのファイルには見つかりません。フロントがレストランに問い合わせたところ、昨晩、ミスがあったので、深夜に伝票を差し替えたとのこと。フロントに事の顛末を話すと、すぐに謝って金額を訂正してくれました。どうやら、彼は反省はしてなかったようですが、お天道さまはみていますよ。イタリアでも。

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