リトル・フォレストに思う
先日、amazon primeで、映画『リトル・フォレスト』を観た。内容としては、小森(だからリトル・フォレスト)という架空の東北の山里出身の主人公「いち子」(映画では橋本愛が務める)が、一度都会に出たあと再び山に戻り、野菜、調味料にいたるまで、半自給自足の生活をするというもの。豊かではあるが厳しい自然の四季を通し、農業、食などをみつめる…というものだ。
話は、淡々と進んでいき、バラエティ的要素はまるでなく、しかも恋愛などのストーリーや、主人公の心模様などはほとんど介在しない。恋愛ドラマ的展開が好きな人には物足らないかもしれないが、僕はこの淡々とした展開のほうが、よほどよいし、逆にリアリティを感じた。
映画は原作にかなり忠実に再現されており、その点も好意が持てる。映画など実写になると、「動員」を意識してか、原作が捻じ曲げられるケースも少なくない。僕はパターンとしては逆ではあったが、その点原作が好きな人にも映画はおすすめである。
とりわけ、料理や食というテーマは、僕にとっても大きな課題であるので、手間を惜しまないこと、丁寧に作ること、食とは別の生き物の命を犠牲する上になりたっているということ(合鴨鴨をしめて解体するといったシーンも)。そういった点で共感する部分は非常に多くあった。
しかし20歳そこそこの女性が、一人で暮らし、大きなナタで薪割りをするし、チェーンソーまで扱う。しかも交通手段は自転車のみ…というのも少々違和感がないことはない。しかも母子家庭で育ったわけだが、母親はある日突然失踪したという設定にも「なんで?」という疑問がわかないでもない。まぁそのあたりはストーリーにおけるスパイスと判断をしているが。
現在のコロナ禍において、「モノがないから生活できない」という今の社会に対し逆にこのような暮らしは、「最初からない」「必要なものは自分で作る」のが基本である上、都市部とある意味孤立した環境にあるので、逆に影響を受けることは少ないだろう。現に東北地方は圧倒的に発症率が低い(小森のモデルがあるとされている、岩手県は発症率ゼロであること)。
ここのところ精神的にかなり疲弊していたところで、知ったこの作品。心おだやかになったことは間違いない。
心が疲れたとき、一人になりたいときには、また読み返したくなる、また観たくなるだろう。おそらく。
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