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知ってまっか、大阪のはちみつ

大阪で増えている家畜、それはミツバチ

知らない人のために、あらためて言うが、西洋ミツバチは家畜だ。
大阪府では農業、とりわけ畜産業は壊滅的状況。府下の酪農家も養豚家も片手で数えるほどしかいなくなり、養蜂家の数は現在39人。それでも微増しているという。ちなみに大阪府下のミツバチの群れの数は1月現在で1200群。
「ミツバチだけですわ。家畜数が増えているのは」と府畜産課の職員らが、冗談半分にほめそやす。
とはいえ大阪の養蜂家は、その約7割が趣味でミツバチを飼っている人たち。養蜂でおもな収入を得ているのは7、8軒程度というから、大阪ではほんとにレアなお仕事ということになる。

大阪の品評会は特殊

品評会が開催された大阪府立環境農林水産総合研究所(羽曳野市)

8月8日、大阪府養蜂組合が主催する第19回はちみつ品評会が開催された。
今年は21名の養蜂家が61点のはちみつを出展。府畜産課関連の職員ら5人が審査員となり、色つや、風味、味わい、糖度などを審査し、優れたはちみつ9点を選抜した。私は優秀な府職員の方々に混じり、「養蜂フリーライター」という怪しい肩書で、かれこれ10年ほど審査に参加している。

はちみつ品評会は全国の養蜂組合で毎年開催される、組合員の親睦を兼ねた
恒例行事。鹿児島や北海道など、プロの専業養蜂家が多い養蜂強豪地域の品評会では、アカシア、レンゲ、ミカンなど商品価値のある高級はちみつに「その花らしさ」がどれだけ現れているかが大きな評価基準になる。
対して、大阪の場合、蜜源となる主要農産物があるわけではなく、特定の大きな花の群落があるわけではないので、ハゼ(ハゼノキ)、クリ、クロガネモチなど、里山に自生するいろんな花のはちみつが主流となる。かつての養蜂業界では「雑蜜」と見下げられ、店頭では「百花蜜」として売られているはちみつだが、他府県では「百花蜜」に分類されるハゼ蜜が、単花蜜として入賞するという特殊な傾向がある。

大阪独自基準とマイルール

はちみつ品評会は、全国組織である日本養蜂協会のガイドラインに概ね従い、糖度50点、色択20点、風味30点の合計100点満点で得点をつける。糖度は80%以上を良しとし、色や風味は、花の種類によって蜜源由来の特徴を
備えていることを評価する。だが、大阪の場合、杓子定規な基準を当てはめると、たちまち審査に行き詰まる。そこで私は養蜂家の状況を加味するというひそかなマイルールを決めている。たとえば、出展はちみつを審査するとき、はちみつをなめながら、私は心の中でこんなやりとりをしている。
「アカシアはちみつって、こんなに黄色い?」→いやいや。大阪ならこの時期、他の花の蜜も混じるでしょ。途中で蜜を抜くほど採れてないはずだし。
「百花蜜なのに色がきれい」→品評会に出すために、新しい巣板を巣箱に入れてくれはったん?
「純粋なクリ蜜ならもっとエグい味になるはずでは?」→きっと他の花も混じってる。逆にマイルドな味になってるんだから、これもアリ。
「これってほんとに蜜源になる木?」→ま、ま、いっか。おいしいから。
私独自の甘々な基準で採点されていく・・・・・・。

質の高い百花蜜は、食べた後、口の中に花の香りがふわっと残って、ほんとうにおいしい。糖度が高いのはいいように思われるかもしれないが、高すぎると香りが消える。糖度をしっかり保ちながら、香りがふわっと残るはちみつを作るのが、養蜂家の腕の見せ所。ここをしっかり審査するようにしている。

少ない蜜源でも健気にがんばる!

大阪府知事賞を受賞した養蜂家、真山さん(左)

当日、品評会にやってきた養蜂家に「最近どうですか?」と聞いてみた。「今までミツバチを置いていた田んぼが駐車場になった。もうレンゲ蜜をとれませんわ」。別の養蜂家は、「近所の会社から、『ミツバチの黄色い糞が飛んできて車が汚れる。巣箱を置かんといてくれ』と言われた。なので、巣箱の数をだいぶ減らしました」。大阪の養蜂家の状況は、ますます厳しい。

府下で養蜂が可能な地域は、北摂や泉南など自然が残るところに限られる。花さえ咲けば、それがクリだろうがハゼだろうが、名も知らぬ花だろうが何でもありがたい。忙しいのは花の時期だけではない。ふだんはミツバチを守るため、害虫のダニを駆除し、秋には天敵スズメバチと闘い、少ない蜜源でもみんな健気に頑張っている。はちみつ品評会に出展し受賞したとて、「大阪府知事賞受賞」などとはちみつに冠して販売する人はいない。そもそも店を構えて売れるほど、大量にはちみつを生産している人はほとんどいない。ただ、ミツバチをうまく飼うことに工夫し、「今年は〇キロも採れたわ」と収穫を喜ぶ。それだけで十分満足しているのかもしれない。

ここで買えます、大阪のはちみつ

しかしながら、大阪府民には大阪の養蜂をもっと知ってもらいたい。彼らの努力を知ることもなく、「ミツバチの糞をやめて」とか「国産はちみつ、何でこんなに高いん?」とか意地悪なことを言わないでほしい。
ということで、今年受賞した大阪のはちみつを紹介する。直接養蜂家の話をきいてぜひ買ってほしいので、販売先も載せておこう。お時間のある方は、ぜひお近くの販売場所で、大阪産はちみつを見つけて、採れた場所の風景を思い浮かべながら、テロワールを楽しんでほしい。
(*)内は受賞したはちみつの種類と採蜜場所

【大阪府知事賞】
 ★真山謹一さん(*ハゼ、和泉市)
 わつか市(四天王寺境内、第1日曜日)/すみすみマルシェ(住吉公園、
 第4土曜日)ほか。詳しくは、https://www.facebook.com/k.mayama
【日本養蜂協会会長賞】
 ★北辻貞夫さん(*センダン、羽曳野市)
 JA大阪南農産物直売所あすかてくるで/産直市場よってって羽曳野
【大阪府畜産会会長賞】
 ★茂野重光さん(*ハゼ、岬町) 
 泉南わくわくシティサザンぴあ/産直市場よってって岬町 
 ★平井昇さん(*クロガネモチ、箕面市)
 JA大阪北部農産物直売所(ほく彩館)
【大阪府養蜂組合組合長賞】
 ★石崎隆則さん(*ミカン・レンゲ、堺市) 
 堺のめぐみマルシェ
 ★井田雄三さん(ハゼ*高槻市)
 不明(大阪府畜産会に要問合せ)
 ★吹上あおいさん(*クリ、能勢町)
 箕面茅野駅前のスーパー、ビオラル。詳しくは、
 ★大植大輔さん(*ハゼ、岬町)
 道の駅みさき夢灯台
 ★柴田直樹さん(*サクラ、熊取町)
 JA大阪泉州農産物直売所こーたり~な。
 詳しくは、https://shibata-youhou.com/


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