見出し画像

八ヶ岳に住むこと -心で耕す、心をたがやす-

わが家の家庭菜園

画像は、わが家のまえにある小さな家庭菜園です。手前に行者ニンニク・奥にイチゴの葉が見えています。苗の周りには、周辺から刈り取った草を敷いています。

これは「雑草マルチ」という方法でして、一般的な黒いビニール素材の防草マルチに比べて、ゴミになりませんし、時間が経てば土に還りますので、とても合理的。家庭菜園レベルではお金もかけなくて良いので経済的です。自然環境にも優しい。

さて、家庭菜園で野菜を育てるという作業はとても楽しいひと時となります。一方で畑の土を耕すということは、やってみるとかなりの重労働です。私の父方の祖父は農業を営んでおりましたので、子ども時分の私にとって畑は身近なものでした。

それでも大人となっていざ、自分が土いじりを体験してみると、土というものの偉大さに気づきます。食の恵みをもたらす土を活かすことは、美味しい野菜づくりに大いに関係するようです。ちなみに私の作る野菜はまだまだ美味しくありません。

2020年5月の大型連休は、コロナ禍の影響もあり、ほぼ遠出して出かける機会がありませんでした。お陰で家庭菜園に例年よりも時間と体力を注ぐことができました。実は昨年は家庭菜園を作らなかったため、今年、わが家の家庭菜園は草ボウボウ = 家庭雑草園となっていました(これが冒頭の雑草マルチへの挑戦につながっています)。

そして、雑草が元気に太く深く広く根を張ってくれたお陰で、畑の土おこしはとてもとても大変でした。慣れないショベルやヒラ鍬(くわ)を土に差し入れて、土を起こします。掘り上げた雑草の根株には土がゴッソリとまとわりついているので、叩いて土を落とします。

土が柔らかくなったら、土を盛り、畝(うね)を作ります。この時、鍬で土をすくって畝を高くするのですが、この作業がどうも私は下手な様子です。土を高く高く盛ろうと思う気持ちが強いせいか、腕や肩や背中に余計な力をかけ過ぎている感じ。

それでは!と、ゴルフのスウィングの様に、鍬の金属部分の重量を生かして振り下ろし地球の重力へ上手に滑り込ませて振り子の軌跡を描く様に動かしてみます。ところが、今度は鍬のヘッドがブレてしまい、土にうまく刺さりません。ただでさえゴルフの腕前が大したことないのに、こんな動きへの挑戦は無謀でした。

何度も試みても、うまく鍬(クワ)を振るコツが掴めません......。

お婆ちゃんが鍬を振る姿は、美しい。

わが家のすぐ隣にある田んぼ。ここは農業機械を入れずらいということで長らく耕作放棄地だったらしいのですが、蜂谷家が移り住んできた当時、私がその土地の地主さんへ挨拶に伺った際、地主さんから「お兄さん、田んぼ作ってみないかい?」と言われました。

この時、私は何の気もなしに了解をしてしまったことから、私のお米づくりがスタートしました。さてさて、お米づくりの話は今回は置いておいて。

この地主さんのお母様。もう80歳代かとは思うのですが、ご自宅の前で畑をつくられています。その鍬を振る姿なのですが、この動作がまたとても自然な姿。見ている限りでは、鍬をチョンチョンと土に当てているだけの様にも見える優しく小さな動き。果たしてこれで仕事が進むのかなぁと思えます。が、進んでいるのです。

対するに私の鍬を振る姿は、空高く、鍬の頭を振り上げて、土に向かってガツガツと打ち込む。まるで剣術ごっこの真似事。きっと土に向かってチャンバラごっこをして闘っているかのごとく。その割には動かす土の量は大したことがありません。

野良仕事に精を出す往年のベテラン・ファーマーの皆さんの姿は、どなたもいかにも自然体。もちろん疲れるであろうとは想像する訳ですが、見ている限りでは舞を踊るかの様にリズミカルにバックステップを進める姿が、とても美しいのです。

整体の先生に教わったこと

そんな力まかせに鍬を振る私のことですから、日曜農家で土をいじると、足腰に強烈なコリやハリやツカれが溜まります。いつもは市内にある6つの市営温泉を巡って湯に浸かり疲れを癒すことを楽しみにしている私ですが、今年はコロナ禍の影響で公営温泉のみならずどこの入浴施設も閉館状態。疲れはかなり溜まりました。

非常事態宣言はすでに解除されていますので、もう温泉施設には行けるのですが、まだ何となく足を運べていない今日この頃。そのかわりについ先日、いつも私が通う整体医院に行って久しぶりに身体を施術してもらいました。

「いやぁ、これはかなり疲れが溜まっていますねぇ〜」という整体の先生の言葉を皮切りに、施術をしてもらいながら世間話が始まります。そして私がカクカクシカジカで、家庭菜園の土いじりに体を酷使しているですよぉなんてお話をしました。

すると、整体の先生いわく、「それは鍬を『頭』で使おうとしているからじゃないですかねぇ。鍬を頭で動かそうとしている限り、身体のあらゆる部分を連携させて動かすことは難しいんですよぉ。それよりも鍬を『心』で触れてみると、良いんのではないですかねぇ〜。」とおっしゃられました。

!!! おっ!? 「心で耕す」。その言葉をお聞きして、なんて素敵な発想なんだろう!と私は感心してしまいました。

そういえば、かつて香港の武道家であるブルース・リー氏は、主演映画『燃えよドラゴン』の中で、「Don't  think !  Feeeel!」( 考えるな!感じなさい ) という有名なセリフをのこしています。このセリフは、

「It is like a finger pointing away to the moon. Don't concentrate on the finger, or you will miss all that heavenly glory.  (それは月を指さすのに似ている。指に気を取られていると、栄光(月)を失うぞ。」とつづく訳ですが、私の土いじりもまさに目指すはこの境地なのかもしれません。

「鍬の先を見るな。心で土を耕しなさい。豊かな稔りを感じながら。」

さぁ、私の土いじりの修行もこの言葉を胸にしながら今日からまたスタートいたします♪

(了)





この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?