03|露天掘りの石灰石鉱山(山口県美祢市・宇部興産伊佐鉱山)
<大地の手触り> 土木学会誌 2014年3月号表紙
カルスト地形で有名な秋吉台の南端に、ぱっくりと大きく口を開けた露天掘りの石灰石鉱山がある。言うまでもなく石灰石は現代社会を支えるコンクリートの原料のひとつであり、日本国内で100%自給できる数少ない鉱物資源である。しかしこの人工景観は、あまりにもスケールが大きく、日本ではないどこかの国にいるのではないかという錯覚に陥る。
この鉱山は、併設されているセメント工場とともに、地域ぐるみで取り組んでいる産業観光ツアーの目玉のひとつになっている。望遠レンズで斜面をじっくり眺めてみると、巨大なはずの重機がかすかに動いていることで、人の活動を確認することができる。
数億年前の生物が地球の一部となり、それを削り取らせてもらうことによって、我々の暮らしが成り立っているという現実。その莫大な自然の恩恵に見合う水準で、我々は文明や文化の質を高められているのかという問いを、正面から突きつけられた気がした。
文・写真:八馬 智 HACHIMA Satoshi
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