企業防衛・・・・

 一度は沈静化したものの、最近再燃化し巷を騒がせているSNS上のバイトテロ。通称“バカッター”と呼ばれる傍若無人を絵に描いたような対象者を、実は多くの企業が記録していることをご存知だろうか。

 この情報データベースは、零細企業であればあるほど実は重要な企業防衛案件となっている。
 イメージダウン程度の微細な(?)業績悪化を乗り越えられるのは大企業くらいで、中小企業以下の零細企業となれば信用価値こそが経営を成立させている最大のバックボーンと言っても過言ではなく、一昔、二昔前のように先代から取引があるからといったような伝統的、縁故的な恩恵を重視する世の中ではもはやなく、平成不況を何とか乗り越えてきた企業にとって、少しでも不安要素は取り除いておきたい業績不振アレルギーは今もなお色濃く残っているのが現状。そこにきてわけのわからない、共通認識や一般的な公序良俗が判断できない奴はなるべく避けておきたいのが本音だ。
 実際に威力業務妨害罪等で有罪判決を受けた場合に限らず、示談交渉等で運よく裁判沙汰を逃れ、賞罰の対象とならない場合であっても、そういうことを一度でも犯した対象者の人格を企業は信用しない。

 SNS上の迷惑動画配信、拡散といった話題性だけがやたらと取り上げられる事件は、一般的なテレビ報道等においては動画が加工されていたり、名前が伏せられている場合がほとんどで、その対象者の詳細な情報は知ることができない。が、ネット上では実にそのほとんどが一両日、または翌日、近日中には実名や住所、顔写真や所属、家族構成までもが晒されてしまうのが現状であり、またその情報を得るのも容易い。
 そういった社会情勢を踏まえて、企業防衛の観点から例をあげるなら、私自身が努める弊社において、そのデータベースは私が作成し、“名寄せ簿”として会社のデータバンクに保存してある。当然厳重なセキュリティの元、ネット接続外の単独PCを用いた社外秘事項として。
 住所氏名顔写真はもちろん、該当事例の詳細やその後の賞罰結果も記述している。ただ、国家権力をもって調査した内容ではないこと、世間に公表するための公的資料ではないこと、一個人が収集した調査内容であることから、その案件の信憑性、信用度についても評価をランク付けを記述している。

 自分達が住む地域は関東圏外の地方部にあって、お世辞にも発展を遂げた都会的な場所ではないが、ネットで炎上してしまった事案をよくよく追って調査していくと、従来の報道を伴う代表的な犯罪行為と遜色ないほどの“私刑”が横行しており、軽率な行動によって量刑こそ軽い場合であっても住み慣れた場所を離れざるを得ない事態になっている状況がかなり多い。
 表向き平穏な暮らしを謳歌させているように見える日本にあっても、実は高ストレス社会でもあることで、共通の敵を皆で吊るし上げ、袋叩きにする行為は激化しており、そこで初めて反省の色を見せても受け入れられることは稀である。そうなった時、対象者が取る行動は自分の存在を全く知らない場所へ逃亡すること。ただ、ネット社会の今、それすらも国内では難しい状況になっている。なぜなら私のように企業防衛という大義名分で防衛網を張る人間がいるから。
 ただ、たとえ実際に面接等の接触があったとしても、それをいちいち口外したりしないというのが弊社の鉄則。あくまでウチでは採用しないようにしているだけで、他社がどう取り扱おうと他社の自由、責任であるというトップの思想を従順に履行しているため。

 個人的な意見で言えば、人生一度や二度の失敗くらい誰にでもあるんだから、挽回や更生の機会は十分な包容力をもって寛容に対応すべきだと思っている。が、自分が所属する組織はあくまで営利団体であり、その業績の如何が自分の生活に直結するため、対象者を庇うことは難しい。庇うどころかそもそも業務上の諸問題の発生源を可能な限り排除するほうが企業にとっては得策なため、そういう問題行動を起こした人≒これからも起こす可能性が高い人という見方から組織には入れないという考えに落ち着いてしまう。

 世間を騒がす殺人、強盗、傷害、暴行、詐欺、窃盗、誘拐だけが取り返しの付かない行動ではなく、一般的モラルが欠落した行動についても、今の時代は命取りになってしまうことを、特にこれから社会人になる年代の人は情報として知っておく必要がある。